「7−5が……死んだ……?」
シムシ国首都、アレクサンドル城の大会議場に、この国のトップである首相アイゼン、それを補佐する7《セブン》が……『六名』、集まっていた。それぞれ管轄を持つ7《セブン》が、一箇所に集まるのは稀なことだった。
「はい、Live時間○月×日午前一時。グラズノの生き残った兵士の証言です。その日から現在まで、7−5の存在は確認されていません。7−5は、『死んだ』とみて間違いありません」
7−1が淡々と事実を報告する。一同の表情に顕著な変化はない。アイゼンは薄く目を閉じて、呟いた。
「5……ニエル……。ゴッドレス……フルファイア……」
アイゼンは席を立つ。
「皆、持ち場に戻れ」
「はっ?」
「皆、それぞれの管轄を今まで通り守れ」
「し、しかし……アイゼン様は……」
「私を守るのが、民を守るより大事なことだと?」
「……」
7−1は、そこで黙ってしまった。
---------------------------------------
最後に7−3が、アイゼン様……と呟きながら扉を閉じた。大会議場には、アイゼン一人が残った。
アイゼンは肘をテーブルに立てて手のひらを重ねた。そしてアイゼンは重なった手のひらを額につけ、
「きたか……。今は7も兵士もいない……出てこい……」
と呟いた。
「流石は『キング』。これ以上の犠牲を避けるために、自ら戦うというその姿勢は非常にいいですよ。ですが貴方はその時点で負けているということに気付けないようですね。非常におしい。私の考えどおりに動いてくれるのは助かりますけどね」
蜃気楼から現れた軽口は、フルファイア。赤い短髪、赤いズボン、赤いサングラス。フルファイアはアイゼンとはテーブルを挟んで反対側の椅子に、座っていた。
「御託はいい。実は私は、気があまり長いほうではないのでね……」
アイゼンは立ち上がり、ツーハンデッドソードを躊躇わず引き抜いた。巨大な剣をフルファイアに向けて振る。テーブルを切る前に止める。テーブルクロスが風圧でなびいた。
ツーハンデッドソードの切っ先をフルファイアに向けたまま、アイゼンは口を開いた。
「ゴッドレス、フルファイアだな」
「ええ、まあ、そうですよ。それにしても、怖いですねえ。客人にいきなり剣を向けるなんて。誰が言ったんでしょうね、アイゼン様は『温厚』だなんて」
「7−5を殺したのは、お前だな? フルファイア」
「ええ、それはもうこんがりと焼かせていただきましたよ……いい声で叫んでくれましたし……」
言い終わるのを待たず、アイゼンの巨体と巨剣が空を舞っていた。アイゼンは落下力と筋力で爆発的に上がった巨剣の破壊力を、全てフルファイアに向けて、叩きつけた。
爆発と同等の効果音。真っ二つに切れたというより折られたテーブル。陥没する床。飛び散る木片。だが、そこにフルファイアの姿はなかった。
銃声のような音と、炎の矢をアイゼンは確認していた。アイゼンは白いオーラを纏った手のひらでそれを弾いた。
「子供騙しを!」
アイゼンは『絶対防御』の白いオーラを、全身から噴出させた。それだけで地面が陥没し、アレクサンドル城全体が揺れた。並みのプレイヤーなら、それを見ただけでも動けなくなる。恐ろしいほどのプレッシャー。
「ふふふ……ふふ」
だが、フルファイアは笑っていた。自分が負けるなどと、微塵にも思っていない笑い。
「さあ、踊りましょう! 『キング』!」
「『ポーン』如きが百年早いわ!」
この出来事は、後にシムシ国全体を揺るがす大きな事件となった。
シムシ国首都、アレクサンドル城の大会議場に、この国のトップである首相アイゼン、それを補佐する7《セブン》が……『六名』、集まっていた。それぞれ管轄を持つ7《セブン》が、一箇所に集まるのは稀なことだった。
「はい、Live時間○月×日午前一時。グラズノの生き残った兵士の証言です。その日から現在まで、7−5の存在は確認されていません。7−5は、『死んだ』とみて間違いありません」
7−1が淡々と事実を報告する。一同の表情に顕著な変化はない。アイゼンは薄く目を閉じて、呟いた。
「5……ニエル……。ゴッドレス……フルファイア……」
アイゼンは席を立つ。
「皆、持ち場に戻れ」
「はっ?」
「皆、それぞれの管轄を今まで通り守れ」
「し、しかし……アイゼン様は……」
「私を守るのが、民を守るより大事なことだと?」
「……」
7−1は、そこで黙ってしまった。
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最後に7−3が、アイゼン様……と呟きながら扉を閉じた。大会議場には、アイゼン一人が残った。
アイゼンは肘をテーブルに立てて手のひらを重ねた。そしてアイゼンは重なった手のひらを額につけ、
「きたか……。今は7も兵士もいない……出てこい……」
と呟いた。
「流石は『キング』。これ以上の犠牲を避けるために、自ら戦うというその姿勢は非常にいいですよ。ですが貴方はその時点で負けているということに気付けないようですね。非常におしい。私の考えどおりに動いてくれるのは助かりますけどね」
蜃気楼から現れた軽口は、フルファイア。赤い短髪、赤いズボン、赤いサングラス。フルファイアはアイゼンとはテーブルを挟んで反対側の椅子に、座っていた。
「御託はいい。実は私は、気があまり長いほうではないのでね……」
アイゼンは立ち上がり、ツーハンデッドソードを躊躇わず引き抜いた。巨大な剣をフルファイアに向けて振る。テーブルを切る前に止める。テーブルクロスが風圧でなびいた。
ツーハンデッドソードの切っ先をフルファイアに向けたまま、アイゼンは口を開いた。
「ゴッドレス、フルファイアだな」
「ええ、まあ、そうですよ。それにしても、怖いですねえ。客人にいきなり剣を向けるなんて。誰が言ったんでしょうね、アイゼン様は『温厚』だなんて」
「7−5を殺したのは、お前だな? フルファイア」
「ええ、それはもうこんがりと焼かせていただきましたよ……いい声で叫んでくれましたし……」
言い終わるのを待たず、アイゼンの巨体と巨剣が空を舞っていた。アイゼンは落下力と筋力で爆発的に上がった巨剣の破壊力を、全てフルファイアに向けて、叩きつけた。
爆発と同等の効果音。真っ二つに切れたというより折られたテーブル。陥没する床。飛び散る木片。だが、そこにフルファイアの姿はなかった。
銃声のような音と、炎の矢をアイゼンは確認していた。アイゼンは白いオーラを纏った手のひらでそれを弾いた。
「子供騙しを!」
アイゼンは『絶対防御』の白いオーラを、全身から噴出させた。それだけで地面が陥没し、アレクサンドル城全体が揺れた。並みのプレイヤーなら、それを見ただけでも動けなくなる。恐ろしいほどのプレッシャー。
「ふふふ……ふふ」
だが、フルファイアは笑っていた。自分が負けるなどと、微塵にも思っていない笑い。
「さあ、踊りましょう! 『キング』!」
「『ポーン』如きが百年早いわ!」
この出来事は、後にシムシ国全体を揺るがす大きな事件となった。
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