62.助

2007年1月29日 LIVE
 ヒーローの心境↓

 うわ、でかい。どうしよう。神速で登ったのはいいけど、どうしよう。うわ降りられない。どうしよう。どうする? 私、どうする?

 後先考えずに飛び出した所為で、私はビッグベアの肩の上で考え事をするはめになってしまった。

「ガウ?」

 当然、ビッグベアは首を傾げた。ビッグベアにとって私は虫のような存在なのだろうが、気になることは、気になるらしい。振り上げた手を、そのまま私のいる肩に下ろしてきた。

「わっ!」

 さっ、と素早く避ける。
 その際、手がツルッと滑る。

「わあああああ!」

 私が落下した音を聞いて、ビッグベアは私の方を振り返った。

「いたた……」

 強かに背中を打ちつけた私に、微震が伝わった。ビッグベアの、足音だ。ビッグベアはゆっくりと体をこちらに向けようとしている。

「……でかい」

 直立ビッグベアの大きさは、三メートルに届いているのではないか? さあ、ブルッ、きた、寒気。ビッグベアは、私を敵と認識したらしい。
 ビッグベアが倒れるようにして、腕を振り下ろしてきた!

「おわあああああ!」

 爆音。砂煙。
 私はどうにか神速を使ってその場を離脱していた。座り込んだまま動かない女性の側まで駆け寄り、呼びかける。

「大丈夫ですか! 早く逃げて下さい!」
「え……? あ……」

 信じられないものを見たような表情で、女性は私の顔にゆっくりと焦点を合わせた。よし、あとは……。

「ザクロさん!」
「はぁ……はぁ……、神速は……ずるいですよ……11さん……」
「この人、お願いします!」

 息を切らせて追いついてきたザクロさんに女性を任せる。そして地面に大きな穴を開け、まだ私の姿を探しているビッグベアの背中に、飛び乗った。

「おおお!」

 そして武器を…… 武器を……?

 ……あれ、もしかして……?

 私、武器持ってない!

 勢いよく立ち上がったビッグベア。私は宙に投げ出された。

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