42.去

2007年1月17日 LIVE
 城の中ほどにある窓という窓から巨大な稲妻が飛び出していた。パリパリと潔く消える稲妻。音の余韻。割れた窓ガラスが雪のように輝いて落ちていった。

「……は」

 力を抜いたのは、炎の男だった。隙といえば、隙。だが隙がない異常な力の抜き方だった。10さんは、動かない。

「……成功ですか、つまらないですねえ」

 炎の男は、またニヤリと笑った。

「まあ、元々こういう予定ではありませんでしたし、元老が一人消えるのは私達の組織にとって、かなりのプラスであると見て間違いありません。よって私は中途半端があまり好きではないのですが、あえてアナタにトドメをささず、アナタの友達にも手は出しません。私はこれでこの都市を去ることとします」
「バレてた?」
「バレバレです」

 どうやら10さんが私のことを知らないと言ったのは、戦いに巻き込まない為だったようだ。炎の男にはお見通しのようだったが。

「嗚呼、これで私は去ってしまいます。そこの初心者。覚えなさい。私は【炎帝】フルファイア。そこの初心者。憎みなさい。私は【炎帝】フルファイア。全てを燃やし尽くします。アナタの肉体、魂さえも」

 長い口上の後、炎帝フルファイアは蜃気楼のように消えた。同時に10さんが、その場に崩れ落ちた。

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