聞こえた、見えたのは現実の世界ではなかった。
「はぁー、あぶねえあぶねえ。間一髪危機一髪」
見えたのは、先ほどまでの崩れかけたレンガの道。聞こえたのは、飄々とした10さんの声。
「生き……てる?」
「ああ、俺が助けたんだよ。初心者」
私は宙に浮いていた。というか10さんに片手で抱えられていた。見かけによらず凄いパワーだ。
「あ、ありがとうございました」
私はとりあえず礼を言って、地面に立った。10さんの反対側の腕には、先ほどの女性が抱えられていた。
「じゃ、このお嬢さん頼むな」
私の方向を見ず、10さんは気絶した女性をゆっくり地面に降ろした。よく見ると、10さんは体中傷だらけだった。というより焼き跡だらけだった。そして何故か表情を見せない。
「10さん……?」
「……お前誰だよ。ここは危ない。早く逃げろ」
おかしい。何かがおかしい。
赤い線が10さんの右肩に縦に引かれた。
バッサリと10さんの右腕が落ちた。
『残念でムカついたよ【神速】。そんなつまらない行動の為に、私と戦うのをやめてくれるなんてね』
「……うるせーよ。お前が勝手にちょっかいかけてきたんだろうが。そしていてーよ。どうすんだよ右腕」
どこからか、声。男性の、心底残念そうな声。あ、ああ……。何故か血は出ない。代わりに煙。何故? でも、右腕がなくなった、10さんは、不恰好になった? 落ちた? 何故?
『もしかして。その初心者か魔法使いはアナタの友達だったとか? それならアナタが必死で助けたのも頷けますよねえ』
「うるせー! 俺は『超』善人だから困ってる愚民どもは助けるしか選択肢がねーんだよ! 俺は知らない奴だろうが知っている奴だろうが平等に助けるのサ! どーだすげーだろ! さらに悲しい事実を付け加えると、俺の友達は少ない! わかったか! 覚えとけ! ここテストに出るぞ! 涙が出てきた! 放っとけ!」
10さんは左手で何もないはずの場所を指差した。その指差した空間を見ていると、ゆっくり赤が覗いた。ゆらゆらと、蜃気楼のように。
真っ赤なズボンと真っ赤な短髪。真っ赤なサングラスの長身の男性。何より異質なのは、上半身全体が燃えていることだった。
炎の男が、あらわれた。
「炎のベストかよ……。くれよ」
「残念ながら無理です。トレジャーハンター、元老、【神速】の10。非常に残念ですが貴方は元老なので、これをあげましょう」
炎の男が取り出したのはやはりと言うべきか燃える剣。
「フランベルジュ……まじで欲しいんですけど」
「ええ、あげますよ」
「持ち主以外が持つとダメなんだよね」
「ええ、燃えますよ」
「じゃ、いらねーよ」
10さんは不敵に笑ってナイフを取り出した。さらに10さんはナイフを左手で器用にくるくると回した後、宙に放り投げて柄を掴んだ。かっこいい。誰だアンタ。
私はまだ状況に追いつけていなかった。10さんが元老? 燃える男? 【神速】? 誰だ。本当に。
「非常に残念ですねえ。アナタは元老なので、殺さなければなりません」
そういう炎の男の顔は、笑っていた。
【さあ、戦いましょう】
「はぁー、あぶねえあぶねえ。間一髪危機一髪」
見えたのは、先ほどまでの崩れかけたレンガの道。聞こえたのは、飄々とした10さんの声。
「生き……てる?」
「ああ、俺が助けたんだよ。初心者」
私は宙に浮いていた。というか10さんに片手で抱えられていた。見かけによらず凄いパワーだ。
「あ、ありがとうございました」
私はとりあえず礼を言って、地面に立った。10さんの反対側の腕には、先ほどの女性が抱えられていた。
「じゃ、このお嬢さん頼むな」
私の方向を見ず、10さんは気絶した女性をゆっくり地面に降ろした。よく見ると、10さんは体中傷だらけだった。というより焼き跡だらけだった。そして何故か表情を見せない。
「10さん……?」
「……お前誰だよ。ここは危ない。早く逃げろ」
おかしい。何かがおかしい。
赤い線が10さんの右肩に縦に引かれた。
バッサリと10さんの右腕が落ちた。
『残念でムカついたよ【神速】。そんなつまらない行動の為に、私と戦うのをやめてくれるなんてね』
「……うるせーよ。お前が勝手にちょっかいかけてきたんだろうが。そしていてーよ。どうすんだよ右腕」
どこからか、声。男性の、心底残念そうな声。あ、ああ……。何故か血は出ない。代わりに煙。何故? でも、右腕がなくなった、10さんは、不恰好になった? 落ちた? 何故?
『もしかして。その初心者か魔法使いはアナタの友達だったとか? それならアナタが必死で助けたのも頷けますよねえ』
「うるせー! 俺は『超』善人だから困ってる愚民どもは助けるしか選択肢がねーんだよ! 俺は知らない奴だろうが知っている奴だろうが平等に助けるのサ! どーだすげーだろ! さらに悲しい事実を付け加えると、俺の友達は少ない! わかったか! 覚えとけ! ここテストに出るぞ! 涙が出てきた! 放っとけ!」
10さんは左手で何もないはずの場所を指差した。その指差した空間を見ていると、ゆっくり赤が覗いた。ゆらゆらと、蜃気楼のように。
真っ赤なズボンと真っ赤な短髪。真っ赤なサングラスの長身の男性。何より異質なのは、上半身全体が燃えていることだった。
炎の男が、あらわれた。
「炎のベストかよ……。くれよ」
「残念ながら無理です。トレジャーハンター、元老、【神速】の10。非常に残念ですが貴方は元老なので、これをあげましょう」
炎の男が取り出したのはやはりと言うべきか燃える剣。
「フランベルジュ……まじで欲しいんですけど」
「ええ、あげますよ」
「持ち主以外が持つとダメなんだよね」
「ええ、燃えますよ」
「じゃ、いらねーよ」
10さんは不敵に笑ってナイフを取り出した。さらに10さんはナイフを左手で器用にくるくると回した後、宙に放り投げて柄を掴んだ。かっこいい。誰だアンタ。
私はまだ状況に追いつけていなかった。10さんが元老? 燃える男? 【神速】? 誰だ。本当に。
「非常に残念ですねえ。アナタは元老なので、殺さなければなりません」
そういう炎の男の顔は、笑っていた。
【さあ、戦いましょう】
コメント
・アレックスの能力はきっと「危険察知を無視するとその行動はなかったことになる」だ
……無敵じゃん?