まるで戦闘機のような速度で飛び去っていく無数のモンスターとそれに乗るモンスターテイマーのプレイヤー達。瓦礫や黒煙、光の柱の中で生存者を探す救出担当のプレイヤー達。おそらく城には、次のリヴァイアサンの攻撃に備えて力を蓄えているであろうバリア師のプレイヤー達が。
今、それぞれ、必死に戦っていた。
ドラゴン達の風を切る音は、全てリヴァイアサンの方向へと去り、残されたのは助けを求める声や、瓦礫。光の柱。死。助け。遠くで残響する爆発音。そして絶望する私。
「10さーーん!」
大声を出す。リヴァイアサンのビームが今は遠くに行ってしまったモンスターテイマー達の大軍を切り裂いたのが見えた。ビームが消えた後を辿るように現れた無数の爆発は光の柱に変わり、その光の柱は束となって大きな光の柱に変わり、天使の斉唱の効果音はやがて天使の大合唱へと変わった。
「10さん!」
不安に不安が重なる。寒気に寒気が重なる。
私は10さんをがむしゃらに探しつづけた。
遠く港近く、突撃する陸の大軍に向かってリヴァイアサンはビームを放った。それはここからは蟻のように見えるカイド軍のど真中を貫き、切り裂き、完膚なきまでに抉った。巨大なビーム跡からまた大きな光の柱の束が発生した。一体今のでどれだけのプレイヤーが死んだのか。
「10さーーん!」
最早私は、恐怖に支配されていた。いつあのエネルギーが自分に向かって放たれるのか。このリアルなバーチャル世界での『死』はどのようなものなのか。もしも10さんが死んでいたら?
戦争 の二文字が私の脳内を支配する。それは理不尽な終わりを提供する悪魔的現象だと私は勝手に思っていた。テレビや歴史の中でしか見たことの無い、現実ではありえないこと。だからこそ、仮想では望んでさえいたはずだったのに。
怖い。
瓦礫の間を走り回り、10さんを探す。途中小さな助けを求める声が聞こえた気がした。その度遠くの爆発音が大きく聞こえ、その小さな声を掻き消した。構わず私は走り出そうとして、
私は何故、ここにいる? 10さんを探すためか?
振り返る。確かに『助けて』、小さな声が聞こえた。
それは小さな良心。それは小さな勇気。でもそれが、重要なことなのかもしれない。
私は目を見開き、閉じて、また開いた。恐怖や焦りは少し薄れて、小さな、本当にそれこそ今聞こえる声より小さな決意を固めた。
私は小さな声が聞こえた瓦礫の山の方へ、走り出した。
---------------------------------
『あの時立ち止まらなければ』
何回そう思ったのだろうか。
ここで私と10さんの運命は決定された。おそらくこの物語で最も重要な分岐点。
ここが、私の物語の本当の始まり。
今、それぞれ、必死に戦っていた。
ドラゴン達の風を切る音は、全てリヴァイアサンの方向へと去り、残されたのは助けを求める声や、瓦礫。光の柱。死。助け。遠くで残響する爆発音。そして絶望する私。
「10さーーん!」
大声を出す。リヴァイアサンのビームが今は遠くに行ってしまったモンスターテイマー達の大軍を切り裂いたのが見えた。ビームが消えた後を辿るように現れた無数の爆発は光の柱に変わり、その光の柱は束となって大きな光の柱に変わり、天使の斉唱の効果音はやがて天使の大合唱へと変わった。
「10さん!」
不安に不安が重なる。寒気に寒気が重なる。
私は10さんをがむしゃらに探しつづけた。
遠く港近く、突撃する陸の大軍に向かってリヴァイアサンはビームを放った。それはここからは蟻のように見えるカイド軍のど真中を貫き、切り裂き、完膚なきまでに抉った。巨大なビーム跡からまた大きな光の柱の束が発生した。一体今のでどれだけのプレイヤーが死んだのか。
「10さーーん!」
最早私は、恐怖に支配されていた。いつあのエネルギーが自分に向かって放たれるのか。このリアルなバーチャル世界での『死』はどのようなものなのか。もしも10さんが死んでいたら?
戦争 の二文字が私の脳内を支配する。それは理不尽な終わりを提供する悪魔的現象だと私は勝手に思っていた。テレビや歴史の中でしか見たことの無い、現実ではありえないこと。だからこそ、仮想では望んでさえいたはずだったのに。
怖い。
瓦礫の間を走り回り、10さんを探す。途中小さな助けを求める声が聞こえた気がした。その度遠くの爆発音が大きく聞こえ、その小さな声を掻き消した。構わず私は走り出そうとして、
私は何故、ここにいる? 10さんを探すためか?
振り返る。確かに『助けて』、小さな声が聞こえた。
それは小さな良心。それは小さな勇気。でもそれが、重要なことなのかもしれない。
私は目を見開き、閉じて、また開いた。恐怖や焦りは少し薄れて、小さな、本当にそれこそ今聞こえる声より小さな決意を固めた。
私は小さな声が聞こえた瓦礫の山の方へ、走り出した。
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『あの時立ち止まらなければ』
何回そう思ったのだろうか。
ここで私と10さんの運命は決定された。おそらくこの物語で最も重要な分岐点。
ここが、私の物語の本当の始まり。
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