コダテと同じようにフォロッサの街並みを一通り見回る。
家屋はほぼコダテと同じで、微妙にカーブする道路に沿って規則正しく並んでいる。黒や緑のローブをきたプレイヤー達が、大きな本を持って小走りしていたり、数人で話し合いながら歩いていたりした。
どうやら他の国の冒険者(しかも私は初心者で、10さんはヒーローのような派手な格好のまま)は珍しいらしく、しきりに見られている模様だった。
「……10さん、その格好寒くないんですか」
「よくぞ聞いてくれた。それはだな、俺の秘蔵のコレクション、」
「どうせ『ポッカポカイロ君』とか取り出すんでしょう」
「な……! 何故わかった……! ――お前まさか、危険察知に加えて、読心術のスキルまで持っているのか!?」
「……持ってません」
しばらく歩いていると、遠く都市の外に、廃墟のようなものが見えた。
「あそこはなんですか?」
「ああ。あれがフォロッサ港だ。都市とは少し離れていてな。ちょっと不便だった覚えがある。
まあそれがリヴァイアサン戦では幸いしたんだがな。なんとか水際、つまり港でリヴァイアサン上陸を阻止。都市までは被害が及ばなかった」
それでも数千人死んだんですよね……。とは聞けなかった。
……そしてできれば、間違いであってほしいことが、ひとつ。……言わなければならない。……気が重い。
「……10さん」
「なんだよ、青い顔して」
ほう、私の気分はキャラに反映されるのか。なるほど凄いと感心している場合ではない。その予感は既に勘違いの域を脱していた。
「……」
「……おーい、アレックスー?」
「……来る」
ゴ、と一瞬大陸全体が大きく揺れた。続いて小刻みな揺れ。大地震がフォロッサを揺らし続ける。私は信じられないものを見た。
海が盛り上がる。廃墟と比較して、それが物凄い大きさだということがわかった。数メートル、なんてものじゃない。数十メートル、数百メートル。
盛り上がった海の頂点から、水色のヒレと背ビレを持った巨大な蛇が現れた。青く光輝く体、うねる海。垂直に飛び出した蛇の化け物は、もう少しで雲に届くというところまで、体を伸ばした。
そしてフォロッサ城の方向に金色の瞳を向けた。瞬間、体を貫かれるような感覚。恐ろしいプレッシャー。何も感じなかった。何もわからなかった。危険察知スキルが麻痺しているようだった。
「……リヴァイアサン……」
10さんの呟き。
リヴァイアサンから発生した衝撃波が雲を吹き飛ばし、陸を伝い、段々広がってこっちに向かってくるのがハッキリ見えた。
衝撃波!? いや、特大の鳴き声!
逃げる? 何処へ?
思考している間に甲高いリヴァイアサンの鳴き声は私を吹き飛ばした。上下左右が全くわからなくなり、物凄い音の奔流は時間の感覚さえ消し去った。
気付いたら、倒壊したり煙突が折れたりした家々、倒れたプレイヤー達と無数の光の柱が、目の前に並んでいた。
聞こえる、プレイヤー達の悲鳴と、天使の斉唱。
ドクン
心臓の音が、間近で聞こえた。
家屋はほぼコダテと同じで、微妙にカーブする道路に沿って規則正しく並んでいる。黒や緑のローブをきたプレイヤー達が、大きな本を持って小走りしていたり、数人で話し合いながら歩いていたりした。
どうやら他の国の冒険者(しかも私は初心者で、10さんはヒーローのような派手な格好のまま)は珍しいらしく、しきりに見られている模様だった。
「……10さん、その格好寒くないんですか」
「よくぞ聞いてくれた。それはだな、俺の秘蔵のコレクション、」
「どうせ『ポッカポカイロ君』とか取り出すんでしょう」
「な……! 何故わかった……! ――お前まさか、危険察知に加えて、読心術のスキルまで持っているのか!?」
「……持ってません」
しばらく歩いていると、遠く都市の外に、廃墟のようなものが見えた。
「あそこはなんですか?」
「ああ。あれがフォロッサ港だ。都市とは少し離れていてな。ちょっと不便だった覚えがある。
まあそれがリヴァイアサン戦では幸いしたんだがな。なんとか水際、つまり港でリヴァイアサン上陸を阻止。都市までは被害が及ばなかった」
それでも数千人死んだんですよね……。とは聞けなかった。
……そしてできれば、間違いであってほしいことが、ひとつ。……言わなければならない。……気が重い。
「……10さん」
「なんだよ、青い顔して」
ほう、私の気分はキャラに反映されるのか。なるほど凄いと感心している場合ではない。その予感は既に勘違いの域を脱していた。
「……」
「……おーい、アレックスー?」
「……来る」
ゴ、と一瞬大陸全体が大きく揺れた。続いて小刻みな揺れ。大地震がフォロッサを揺らし続ける。私は信じられないものを見た。
海が盛り上がる。廃墟と比較して、それが物凄い大きさだということがわかった。数メートル、なんてものじゃない。数十メートル、数百メートル。
盛り上がった海の頂点から、水色のヒレと背ビレを持った巨大な蛇が現れた。青く光輝く体、うねる海。垂直に飛び出した蛇の化け物は、もう少しで雲に届くというところまで、体を伸ばした。
そしてフォロッサ城の方向に金色の瞳を向けた。瞬間、体を貫かれるような感覚。恐ろしいプレッシャー。何も感じなかった。何もわからなかった。危険察知スキルが麻痺しているようだった。
「……リヴァイアサン……」
10さんの呟き。
リヴァイアサンから発生した衝撃波が雲を吹き飛ばし、陸を伝い、段々広がってこっちに向かってくるのがハッキリ見えた。
衝撃波!? いや、特大の鳴き声!
逃げる? 何処へ?
思考している間に甲高いリヴァイアサンの鳴き声は私を吹き飛ばした。上下左右が全くわからなくなり、物凄い音の奔流は時間の感覚さえ消し去った。
気付いたら、倒壊したり煙突が折れたりした家々、倒れたプレイヤー達と無数の光の柱が、目の前に並んでいた。
聞こえる、プレイヤー達の悲鳴と、天使の斉唱。
ドクン
心臓の音が、間近で聞こえた。
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