ロフ島の北側にカイド王国首都、フォロッサがある。ロフ島唯一の港町『モエリ』は島の南側だったから、結構距離があった。またもや馬車に乗ることになった。そういえば、私、Liveに来て以来、モンスターとまともに戦っていないような……。思い出せばいつも私は揺られる馬車の中。モンスターと最後に戦ったのは……。
ある意味恐ろしい考えに至り、私は自分で自分をごまかすために10さんに話し掛けた。
「なんでフォロッサには港が無いんですか?」
「……んー。いや、あったんだが、なくなった」
「え?」
「まあ、いいや。ついでだ。……カイド王国の特徴は知ってるな」
「え? ……ええ。ある程度なら」
魔法の国、カイド。衆、シムシと並ぶ三大国の一つ。
「だが、カイドは人口が圧倒的に他の二国より少ねえ。それでも他の二国と同等の立場、領土が維持できている秘密は知ってるよな?」
「ええ。魔法と、強力なパートナー。ですよね?」
「そうだ。そしてそれらを実現しているのが、『フォロッサ大図書館』と、『賢者の石』だ」
だから、カイド王国最大の特徴は、首都にある『フォロッサ大図書館』と、至高の宝石『賢者の石』、らしい。
大図書館はその名のとおり、一般書物、呪文書、魔術書、料理本などなど。総て読みきったものはいないと言われるほどの量の本が収められているという。世界にある呪文書や魔術書のほとんどは、その大図書館から流れ出たものであるとも言われている。
「魔法使いを目指すプレイヤーは、全員フォロッサ、つまりはカイドに集まるといってもいい。呪文書を読むか、誰かに教わるのが魔法上達の一番の近道だからな。カイドにはその二つが揃っている」
……10さんが珍しく真面目なことを言っている。
「だが、それより凄い……厄介なものがフォロッサにはある」
おそらくそれが、賢者の石、なのだろうか? 実はこの石に関する情報は少ない。現在の所有者はアトラ王と言われている、ぐらいだろうか。こんなもの情報とは呼べないが。
「ま、そんなもんだろうな。俺も詳しくは知らん。というか多分あの寅王も『賢者の石』が一体どんなものなのか、その本質は知らないと思うぜ。
だが、あいつの国が大きくなったのはその石の効果の一つのおかげだ。多分、間違いない。
『賢者の石』、それは強力なモンスターを呼び寄せる、という効果のな」
強力なモンスターを呼び寄せる……。
「ああ。これは俺も喉から手と足が出るほど欲しいと思ったんだが、やめておいた。滅茶苦茶強いモンスターが次から次へと襲ってくるんだぜ? 俺は絶対嫌だ。
だが……諸刃の剣だな。その強力な効果を逆に利用する。全く、あいつはとんでもねえわ。強力なモンスターは、強力なパートナーになり得るということだ」
……なるほど。強力なモンスターを味方につければ、強力な戦力となる。
「そんで、えらく遠回りしちまった気がするが、フォロッサの港が壊れたというかなくなった理由はそれだ。
うーん。多分、随分、前なんだが。賢者の石に呼び寄せられた馬鹿強いモンスター、リヴァイアサンに襲撃されて、破壊されたらしい」
「全部?」
「いんや、港だけ」
港だけ……。最早単位が違う。
「城の方はなんとか無事だったらしいけど。……まあー、あの城は数え切れないほどモンスターの襲撃にあってるからなー。もう慣れたもんだぜ。世界最強の城って言われてるし。
――ま、それでもリヴァイアサン戦じゃ、数千のプレイヤーが昇天したらしいがな」
10さんはニヤッと笑った。
数千……。ブルッ、と体が震えた。そして寒気が体中を襲った。
「その時のリヴァイアサンは逃げちまったらしいからな……。もしかしたら、またフォロッサに……」
「や、やめてくださいよ……」
馬車の車輪の音が変わる。いつのまにか舗装された道に入ったようだ。首都フォロッサは近い。外を見るが回りは雪で真っ白。何も見えなかった。
「この雪じゃ、城を見つけるのは無理だ。おとなしく座ってろ」
馬車には私と10さんしか乗客はいなかった。
また突然、恐ろしい寒気が私を襲った。それを寒さの所為だと勘違いして、私は馬車の中でフォロッサ到着を待った。
ある意味恐ろしい考えに至り、私は自分で自分をごまかすために10さんに話し掛けた。
「なんでフォロッサには港が無いんですか?」
「……んー。いや、あったんだが、なくなった」
「え?」
「まあ、いいや。ついでだ。……カイド王国の特徴は知ってるな」
「え? ……ええ。ある程度なら」
魔法の国、カイド。衆、シムシと並ぶ三大国の一つ。
「だが、カイドは人口が圧倒的に他の二国より少ねえ。それでも他の二国と同等の立場、領土が維持できている秘密は知ってるよな?」
「ええ。魔法と、強力なパートナー。ですよね?」
「そうだ。そしてそれらを実現しているのが、『フォロッサ大図書館』と、『賢者の石』だ」
だから、カイド王国最大の特徴は、首都にある『フォロッサ大図書館』と、至高の宝石『賢者の石』、らしい。
大図書館はその名のとおり、一般書物、呪文書、魔術書、料理本などなど。総て読みきったものはいないと言われるほどの量の本が収められているという。世界にある呪文書や魔術書のほとんどは、その大図書館から流れ出たものであるとも言われている。
「魔法使いを目指すプレイヤーは、全員フォロッサ、つまりはカイドに集まるといってもいい。呪文書を読むか、誰かに教わるのが魔法上達の一番の近道だからな。カイドにはその二つが揃っている」
……10さんが珍しく真面目なことを言っている。
「だが、それより凄い……厄介なものがフォロッサにはある」
おそらくそれが、賢者の石、なのだろうか? 実はこの石に関する情報は少ない。現在の所有者はアトラ王と言われている、ぐらいだろうか。こんなもの情報とは呼べないが。
「ま、そんなもんだろうな。俺も詳しくは知らん。というか多分あの寅王も『賢者の石』が一体どんなものなのか、その本質は知らないと思うぜ。
だが、あいつの国が大きくなったのはその石の効果の一つのおかげだ。多分、間違いない。
『賢者の石』、それは強力なモンスターを呼び寄せる、という効果のな」
強力なモンスターを呼び寄せる……。
「ああ。これは俺も喉から手と足が出るほど欲しいと思ったんだが、やめておいた。滅茶苦茶強いモンスターが次から次へと襲ってくるんだぜ? 俺は絶対嫌だ。
だが……諸刃の剣だな。その強力な効果を逆に利用する。全く、あいつはとんでもねえわ。強力なモンスターは、強力なパートナーになり得るということだ」
……なるほど。強力なモンスターを味方につければ、強力な戦力となる。
「そんで、えらく遠回りしちまった気がするが、フォロッサの港が壊れたというかなくなった理由はそれだ。
うーん。多分、随分、前なんだが。賢者の石に呼び寄せられた馬鹿強いモンスター、リヴァイアサンに襲撃されて、破壊されたらしい」
「全部?」
「いんや、港だけ」
港だけ……。最早単位が違う。
「城の方はなんとか無事だったらしいけど。……まあー、あの城は数え切れないほどモンスターの襲撃にあってるからなー。もう慣れたもんだぜ。世界最強の城って言われてるし。
――ま、それでもリヴァイアサン戦じゃ、数千のプレイヤーが昇天したらしいがな」
10さんはニヤッと笑った。
数千……。ブルッ、と体が震えた。そして寒気が体中を襲った。
「その時のリヴァイアサンは逃げちまったらしいからな……。もしかしたら、またフォロッサに……」
「や、やめてくださいよ……」
馬車の車輪の音が変わる。いつのまにか舗装された道に入ったようだ。首都フォロッサは近い。外を見るが回りは雪で真っ白。何も見えなかった。
「この雪じゃ、城を見つけるのは無理だ。おとなしく座ってろ」
馬車には私と10さんしか乗客はいなかった。
また突然、恐ろしい寒気が私を襲った。それを寒さの所為だと勘違いして、私は馬車の中でフォロッサ到着を待った。
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