32.訳

2007年1月5日 LIVE
 ということで、私は雪降り積もる港町、コダテに来ていた。つまりはどういうことか。

「うおおおー! コダテ名産『百足蟹』だああああ! おっちゃん! ひとつう!」
「あいよー、毎度ー」
「うめええええ! なんだこれ! 本物の蟹の味がするぜ! それが百本!? ありえねえ……、なんというクオリティ!」

 この異様にテンションが高いこいつ、じゃなくて10さんに流されたというわけだ。

「なんだよ、暗いなー。まだ寒いのか? 蟹食いたいのか?」

 確かにカイド王国に入ったとき、少し寒さは感じていたが、10さんに貰った服や帽子、道具で今は寒くなくなっていた。……悪い人じゃ、ないんだけど。

「よーし、船の出航まで街を探検するぞ! お前も来いよ!」
「ちょっと引っ張らないで下さいよ、10さん」
「まだ敬語かよ! 他人行儀なんだよ! 10でいいよ10で!」

 あんたが人懐っこすぎるんだ。

 カイド王国の港町、コダテ。道を行く人は皆厚着で、吐く息は白い。立ち並ぶレンガの煙突から出る白い煙は、灰色の空にゆっくり混じっていく。雪は降ったり止んだりを繰り返す。
 どうやら暖炉はレンガ、家屋は木造の家が多いらしい。時々見かける国色である緑は、シムシに比べると控えめかな、と思った。
 変わりに景色に多いのは、圧倒的に白。雪が家屋の屋根を全て白く染め上げ、道の端を隠し、時々景色に無数の白い点を作った。道はレンガで舗装されていたので歩きやすい。

「綺麗な街だなー」

 同感だった。雪国、という言葉がふさわしい。
 市場を抜けると、港に出た。大きな船が一つと、小さな船が一つ。大きな船と港の間で、船員のプレイヤーや荷物が忙しく動いている。輸入品の積み下ろし、輸出品の積み込みなのだろう。
 天気が怪いのでぼやけているが、遠くに大きな島が見える。恐らくあれが、カイド王国首都『フォロッサ』のある島なのだろう。横で10さんはなにやら真剣に考え込んでいる。

「どうしたんですか?」
 いい予感はしなかったが、一応聞いてみた。
「……面倒だな、泳いでいくか」

 ねーよ。

 止んでいた雪が、また降り始めた。

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