94、限りある 【かぎりある】
2006年7月8日 100題・西城遊里
―― ―― 嘘
―― 嘘
―― 嘘!!!!!
死んでイル。 ――嘘
穏やかな表情で死んでイル。 ――嘘
ボロボロになって死んでイル。 ――嘘
何も語らなかったその人は、 ――嘘
やはり、何も語らず、いなくなった。 ――嘘
限りある命を使い切って。 ――嘘
「なん――で?」
貴方は、強かったのに。
褐色の能力は、黒い影になんか、負けないはずなのに。
カイを、 守ったから?
『違うよ』
……誰?
『やや、これは寄り道だがね。やはり、人は等しく、真実を知るべきだと、思ってね』
……誰?
『カミギ、と名乗っておこうか』
-------------------------------------
真実を聞いた後に、到来した感慨は『無』だった。
結局、遠くから聞こえた声の主は何者だったのか、知ろうとは思わなかったし、知ることもできなかったのだろう。
私にはひとつの成すべきことができた。
――それだけで充分だった。
-------------------------------------
今更ながら、二人組みの先輩の方は徳永《トクナガ》、後輩の方は山岸《ヤマギシ》という名前、なのらしい。
私達四人はある場所を目指して走る。
ますます増える影達を消しながら、避けながら。
「理解者がいるのは本当にこっちですか!?」
知らない声が教えてくれた、とは言えない。
「こっちよ」
トクナガに淡々と答える。
キバの死体は置いてきた。その場で泣きじゃくるカイはキバから引き離し、今は私が背負っている。二人組みはカイの負んぶを代わると言ってくれているが、カイの動揺は激しかった。私がすぐ傍にいないと、私が触れていないと、壊れてしまうかもしれない。今も私の背中で泣いているカイは、年相応の女の子に見えた。
とりあえず、生き残らなければ意味がない。
そして、この状況を突破でき得るのはただ一人だけだった。
生きているか、死んでいるか、別にして。
人であるのか、化け物であるのか、別にして。
――黒の雨はまだ酷くなる。
――彼の死に私は泣けなかった。
――カイの可能性を信じよう。
――泣きじゃくるカイは、まだ、壊れていない。
――この狂った世界の中でまだ、壊れていない。
――彼は信じた。
――I want also to believe.
―― ―― 嘘
―― 嘘
―― 嘘!!!!!
死んでイル。 ――嘘
穏やかな表情で死んでイル。 ――嘘
ボロボロになって死んでイル。 ――嘘
何も語らなかったその人は、 ――嘘
やはり、何も語らず、いなくなった。 ――嘘
限りある命を使い切って。 ――嘘
「なん――で?」
貴方は、強かったのに。
褐色の能力は、黒い影になんか、負けないはずなのに。
カイを、 守ったから?
『違うよ』
……誰?
『やや、これは寄り道だがね。やはり、人は等しく、真実を知るべきだと、思ってね』
……誰?
『カミギ、と名乗っておこうか』
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真実を聞いた後に、到来した感慨は『無』だった。
結局、遠くから聞こえた声の主は何者だったのか、知ろうとは思わなかったし、知ることもできなかったのだろう。
私にはひとつの成すべきことができた。
――それだけで充分だった。
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今更ながら、二人組みの先輩の方は徳永《トクナガ》、後輩の方は山岸《ヤマギシ》という名前、なのらしい。
私達四人はある場所を目指して走る。
ますます増える影達を消しながら、避けながら。
「理解者がいるのは本当にこっちですか!?」
知らない声が教えてくれた、とは言えない。
「こっちよ」
トクナガに淡々と答える。
キバの死体は置いてきた。その場で泣きじゃくるカイはキバから引き離し、今は私が背負っている。二人組みはカイの負んぶを代わると言ってくれているが、カイの動揺は激しかった。私がすぐ傍にいないと、私が触れていないと、壊れてしまうかもしれない。今も私の背中で泣いているカイは、年相応の女の子に見えた。
とりあえず、生き残らなければ意味がない。
そして、この状況を突破でき得るのはただ一人だけだった。
生きているか、死んでいるか、別にして。
人であるのか、化け物であるのか、別にして。
――黒の雨はまだ酷くなる。
――彼の死に私は泣けなかった。
――カイの可能性を信じよう。
――泣きじゃくるカイは、まだ、壊れていない。
――この狂った世界の中でまだ、壊れていない。
――彼は信じた。
――I want also to believe.
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