――優しく笑って、光の中に入っていくのは、 だ――れ――?

 ――ソウ――さん?

 ――何を言って――――いるの? ――聞こえ――ません――。

 ――――――――え? ――――――

 ――――――いつかどこか で?

 ――光が薄れていきます。

・二人組み

 最後のスタングレネードで影達が怯んだ隙に、一階に転がり込む二人組み。
「さて、鬼がでるか蛇がでるか」
「何も出なかったら俺達終わりですけどね、先輩。今までありがとうございました」
「不吉に感謝するんじゃねぇ」
 光と爆音が余韻を残して消えていく。怯んだ影は元のカタチに戻ろうと必死になっている。
「正面に人影発見しました、先輩」
「よっしゃお前、見て来い」
「いやっすよー、鬼だったらどうするんですかー」
「説得しろ。 四の五の言ってる暇はないんだよ。生きたいのか死にたいのか俺に殴られたいのか、さぁ、選べ」
 嫌々ながらも他に取るべき行動がない後輩は人影にかけよる。その人影の顔を見て、後輩は驚きの表情を露にする。
「先輩……。美人が出ました」
「おう、そりゃ、ラッキーだったな………………ん?」

----------------------------------------------

・西城遊里

 光が収まる。同時に見えたのは薄暗い天井と。面白い顔をしている男と。無数の黒い影。
 ユウリは男の胸元のポケットから特殊合金ナイフを取り出し(スリ)、強く握った。
「あ、それ、高いのに!」
 無視。
 次の瞬間にはナイフの周りの空気が歪み、白銀の刃に赤みがさした。
 西城遊里の発現――『橙の掌』――手のひらに触れた物の熱を操作する。今更ながら、本当に今更ながら人間&現実離れした能力。急激な温度変化で小規模の爆発を起こすことも可能。その他はややこしいので省く。
 一瞬で形状を保てる限界まで熱せられたナイフは、その存在だけでも気流を乱すほどだった。影は少し怯むが、やはり恐れは皆無。元のカタチに戻った順に、三人に襲いかかる。
 高温になったナイフの刀身を両手で引き伸ばす。特殊合金ナイフは粘土のようにぐにゃりと伸びた。すぐに熱量を抑えて熱硬化を狙う。一瞬の熱間鍛造。ナイフは歪で薄っぺらい、ジグザグした剣のような形状になった。

 ――形状変更完了。

 すぐさま変形しない程度の熱量を歪なナイフに注ぎ込む。薄っぺらな刀身に赤みがさす。が、影を切ったときにこの刀身が折れては何の意味もない。絶妙な刀身厚と熱量を実現。

 刀身に込められた熱量は、影を切断するに足るエネルギー量。

 ユウリは低く構え、威力は高いが軽い剣を横に払った。近づいてきた影は上下二つに切断され、黒い霧になって綺麗に消える。
 ユウリの視界に見知らぬ二人の人間の姿が入った。思考を単純戦闘から防衛戦闘に切り替える。
 影を薙ぎ払っていく橙の美しき女性。踊るように、冷酷に、華麗に、見知らぬ二人を守りながら、赤い剣を振るう。

「フランベルジュを持ったヴァルキリーっすよ、先輩」
「なにそのファンタジー」

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索