・西城遊里 (橙色の人、気絶中)

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 光が溢れています。

 私は光に溶けそうです。

 光に眼が慣れてくると、何故かあの日の光景が浮かびました。

-Lost day-

 私と、キバと、カイ。
 まだ世界に緑が残っていた頃、私達三人は草原を歩いていました。赤い空では太陽があらん限りの光を放っていました。草原を風が通り抜けるたびに、見渡す限りの草原の草が揺れて、綺麗な波形を描いていました。
 草原を海とすると、海に浮かぶ島のように大きな岩がありました。私達はその影に入りました。その頃、まだカイは私達と出会ったばかりでした。感情の起伏は乏しく、眼は虚ろで私達のことを見てはくれませんでした。帽子を深く被り、俯き加減で座っているカイは、泣いているようにも見えました。

 ドスン

 と、私達の後ろで大きな音がしました。私達は驚いて振り返ります。全身黒尽くめの、明らかに怪しい、初老の男性が倒れていました。
 岩の上で寝ていて、うっかり落ちてしまったというその人は、とても優しそうな笑顔を浮かべました。彼は私達三人を見て、ご家族ですか? と言いました。
 私は、いいえ、と答えます。彼は、そうですか、と言ってそれ以上深くは聞いてきませんでした。

 ――突然、辺りが暗くなりました。

 ――――黒い影達が草原(緑)を破壊しながら近づいてきました。

 影との戦いは、敗北でした。
 カイは、死を免れないほどの重傷。
 右腕右足といくつかの臓器を失い、さらに虚ろになった瞳は何も見ていませんでした。
 帽子と服は血に染まり、荒い息遣いは段々小さくなっていきました。
 事故、不注意。それは、いまさら言っても仕方がないことでした。私とキバは何も出来ず、ただ立ち尽くすだけでした。
 そんな中、彼は、ソウさんは、深い褐色の瞳を、カイに向けて、

『まだ幼い女の子を、死なせるわけにはいかないねぇ……』

 優しく、悲しく、微笑みながら、手を差し伸べました。

コメント

ポチ&黒
ポチ&黒
2006年7月7日0:14

女だったの!!?

平田
平田
2006年7月7日19:43

はい、そうですが

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