・世界

 地球に張り付いた垢のようなビル群。
 人間が作り上げた文明と建築物。
 それらを掃除するのは、人間の影の部分。
 水泡に帰すのは、人間の黒の部分。

 黒の影。

 一番背の高いビルから暗雲に呑み込まれ、分解されて、消えていく。そのゆっくりと空から世界が消えていく様子は、まるで深い夢から覚めていくような様子にも似ていた。
 人々の中には、その様子に安堵したものもいた。やっと、解放される……。そんな人は次の瞬間に、黒い影と化した。

 理性のない影達は、ある純粋な黒の方向性に従う。集結する。
 かつてはニホンと呼ばれた島国の、全、破壊。
 無数の影の塊である暗雲は、ニホン上空に徐々に広がっている。
 世界を着実に蝕んでいく。

 同時に、人間達も動き出す。
 今起こっているのがどういうことなのか、人々にはわかっていた。

 人類は最早ほとんどいなくなったが、=(イコール)いなくなったわけではなかった。
 組織、都市、町、村、家族、個人。
 理解者、発現者、人。
 武器を持っているものは戦いに赴く。

 大切なものを守る、世界を守る、死にたくない、自己保身、復讐、怨み、強さの追及、意味の追求。
 人々の意志の数だけ、理由があった。

 いかに人としてのカタチを保っている者が少なくても。
 いかに多勢に無勢であっても。

 いかに暗雲を切り裂く一条の光(希望)が見えなくても。

 これは、この時、人類最初で最後のチャンスで。
 そして、そして、人類最初で最後の――愚行であった。

 ――と、後に語られることになるだろう。
 もしも、人類が、『滅ばなければ

・黒部洋
白瀬の消えた世界に意味はない。以上。

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