・白瀬英輔

 終わる。

 今度こそ、――確実に。

 終わる

 死は怖くないんだ。(嘘だ)

 ただ、自身の罪が怖い。(嘘だ)

 あの日、世界を壊した日。

「世界を壊したい? いいよ、私が協力すれば可能だ」

 たまたま(か、どうかはわからない)出会ったカミギが、そんなことを言うから、僕は、世界を壊した。(責任転嫁)

 黒部が連れてきたと思っていた。――違う、その頃には神木さんのことを忘れていたボクが、自分で、屋上に、連れてきた。
 神木さんの指示に従って、ボクは世界を壊した。
 ボクが世界を壊した。

(イジめられていた、腹いせ? それで、世界を壊そうと、思った?)

 ――ずっと、世界を壊したのは、黒部だと、深いところで安心していた。
 その時はカタチがなかった、黒部の所為だと。

(僕は、深い、深い、心の中で、ソレを望んでいた)

 黒部は世界が壊れたときにカタチを得た。
 暗くて狭い、僕の心の中で、縛られながら、僕の負の感情だけを受けて、真っ黒に染まっていった黒部は、その時カタチを得た。

 僕の黒のエネルギーが、黒部のカタチを作り出した。

 僕の髪は白くて短い。
 彼の髪は黒くて長い。
 けれど、本質の姿形は全く一緒。
 僕はあまりにみすぼらしくて、彼はあまりに華麗だから、誰も気付かなかったけれど。あまりに色が正反対で、気付かなかったけれど。
 僕と黒部は、一緒だった。

 僕の負の感情は黒部と純粋な黒を発現させて、
 僕に残された正の感情は純粋な白を発現した。

 そうなってしまった理由はきっと、僕もグチャグチャの黒色だったから。
 そうならないと、僕は影になってしまったから。ただそれだけ。(保身)
 たまたま可能だった、自己保身。

 ――そう、それだけ。僕は決して、純粋な『白』なんかじゃなかった。ドス黒いものを、黒部に渡しただけの、グチャグチャの黒だった。この世界の影たちと何ら変わらない。グチャグチャの黒だった。

 そうして、ボクは世界崩壊の瞬間を生き延びた。

  ソレ(世界の心臓)を引き抜いたときに、世界のほとんどの人々が影になって、影にならなかったほとんどの人々が、影に殺されたのに。

 世界を地獄にして、自己保身の為に純粋な黒である黒部を生み出したのに。

 僕は生き延びている。
 人間じゃないモノになっても、生き延びている。(自分が可愛いから)

 そして僕は、無意識に、手探りで探していた。この世界を壊してしまった罪を、償う方法を、手探りで探していた。(偽善)
 壊してしまったからには、治すしかない。(取繕い)
 決して治らないと知りながらも。(無駄)
 治そうと、一部分でも、治そうと。
 人を助けて、命を助けて、矛盾<影>を消して、命を助けて、己のみを省みないように。(後ろめたい)
 川に流された犬を助けて、影に襲われた村を救って、黒部に殺されそうになった人を庇って。

 必死に、必死に、

 自分の罪を隠そうとしていた

 ――滑稽だ。

 自身が押しつぶされそうな程、重い罪を、隠せるものか!

 ……ああ、  ああああ! うっ……あああ 、ああうっ……。

 気付けば、泣く。 泣く。 謝る。 何に対して?

 偽善。 罪。 保身。 誕生。 逃げ。

 ああああ…… ああうっ……。

 謝る。 誰かに、謝る。 決して許されない。

 ごめんなさい。 ごめんなさい。

 誰かが、見ている。 誰か、殺してください。 死にたいんです。

 うぅうっ、ううぅ……。

 でも、助けて。 ごめんなさい。 僕は醜い、汚い、みすぼらしい、         価値がない。

 這いつくばって、見えなくなった眼で、探す。
 手探りで探しているのは、生き延びる方法。
 本当に、嫌気がさした。

 自分に、  ―― 嫌気がさした。

 ……――――それでも、 ……うぅっ……うっ…… ……生き延びたいんです。 ――ごめんなさい。

 止まらない涙を手の甲で受けて。

 謝る。 謝る。 泣く。 泣く。
 滑稽な僕。

 ――ごめんなさい、ごめんなさい。

 これが、最期だから。

コメント

痺れ武蔵
痺れ武蔵
2006年7月2日17:54

あqwせdrftgyふじこlp;@

ザクロ
ザクロ
2006年7月3日20:02

今後の展開から目が離せない

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