・白瀬英輔

「エ……? ア……?」

 言いかけた言葉は、大気に溶けて消えた。
 代わりに、浮かんで、きたのは、

-----------------------------------------

 平和な日々。

 殴られて、いじめられて。 何も覚えてなくて、知らなくテ。
 じんじんと痛む頬を撫でながら、屋上に出た。
 晴れ渡った青空。澄み切った田舎の風。

「毎日、いるよね、君」
 ふわりとした心地の良い声が脳を刺激した。
「青空と、この風がたまらないんだ」
 答えて振り返ると、黒い髪が印象的な、中性的で整った顔立ちの少年が立っていた。
「大丈夫、傷?」
 心配そうに僕の顔を眺めている。
「慣れたよ」
 僕ははにかんだ。

「黒部洋。16歳。独身」
 中性的な顔立ちの彼は、僕がイジめられている、ということを知ってか知らずか明るく自己紹介をしてきた。
「ヨウ? 太平洋の洋?」
「うん」
「そうか、僕は白瀬英輔。ヨロシク、ヨウ」
 即。僕らは友達になった。

 太陽のように、まぶしい記憶。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索