81、足下 【あしもと】
2006年6月24日 100題・古藤枝理
遠い空には暗雲が立ち込めていた。
村の皆の顔も、曇っている。
「エリ、家に入りなさい」
村長が私を呼んだ。
でも私は、暗雲から眼を逸らすことができない。
――少し前に、
白い閃光を見た気がした。
村を助けるために影と闘い、左腕を失くした少年。
まだあどけなさを残していた、少年。
一瞬、脳裏を、過ぎた。
「……気のせいよね」
視線を落とし、足元にいたポチを撫でる。
……ポチはシラセが村を出てから、少し大きくなっていた。
「家に入るわよ、ポチ」
原始的な、木で出来た家。それでも人は、家があると安心できる。
「……どうしたの?」
ポチは暗雲の方向を見つめ、地面に座ったまま微動だにしない。
私は傍にしゃがみ、ポチの瞳を覗く。
真っ黒な瞳には、朝焼けの赤い空と、生きているように動く不吉な暗雲が映っていた。
遠い空には暗雲が立ち込めていた。
村の皆の顔も、曇っている。
「エリ、家に入りなさい」
村長が私を呼んだ。
でも私は、暗雲から眼を逸らすことができない。
――少し前に、
白い閃光を見た気がした。
村を助けるために影と闘い、左腕を失くした少年。
まだあどけなさを残していた、少年。
一瞬、脳裏を、過ぎた。
「……気のせいよね」
視線を落とし、足元にいたポチを撫でる。
……ポチはシラセが村を出てから、少し大きくなっていた。
「家に入るわよ、ポチ」
原始的な、木で出来た家。それでも人は、家があると安心できる。
「……どうしたの?」
ポチは暗雲の方向を見つめ、地面に座ったまま微動だにしない。
私は傍にしゃがみ、ポチの瞳を覗く。
真っ黒な瞳には、朝焼けの赤い空と、生きているように動く不吉な暗雲が映っていた。
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