――死力 意味:命を捨ててもよい、という覚悟で出す力。必死の力。
 ・真回宗 最後

 私を殺そうとしている敵は、死力を尽くしているのだろう。
 だが、生きている人間の死力など、死んでいる人間の死力に敵う筈がない。
 イノチを捨てても良い覚悟など、私はとうの昔にできていて、とうの昔に証明しているのだから。

 頭のカタチは既に潰れていたが、どうということもない。
 抑えられていない右腕で敵の胸を貫けば、終わりである。

 ――そこで私は自分の愚かさを知った。

 頭、五感をほとんど潰された私は、それを第六感で感じた。

 ――時を与えすぎたか。

 敵(キバ)の攻撃はふとなくなったが、

 私は自身の敗北を知る。

 そこに敗北感はなく、

 解放感だけがあった。

 ――いつから私は、何かを成し遂げるために、命を捨てる覚悟を、なくしてしまったのだろう。

 それがソウの最後の思考となった。

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