・高橋秋

 しばらく、事態を把握できなかった。
 ソウが目の前に迫り、死の一文字が浮かんだときには、白い矢がソウを弾き飛ばしていた。
 白い矢は――シラセ、エイスケ。確かにシラセだった。

 ありえない。視診とはいえシラセの死は確認していた。この青い眼が捉えたシラセはあらゆる要素において「死体」だった。
 いや、この狂った世界ならありえなくはないか。すぐに思考を修正する。空は赤いし、影は人を襲う。話によると、あのソウも一度死んでいたのだ。シラセが蘇る。ありえないことはない。世界が壊れているなら自分も壊れるしかない。
 そう、シラセはソウと同じように、完全な死から蘇った?
 
 蘇った、じゃない、な。あれは、まるで――

 アスファルトを抉る音。
 強烈な衝撃が地面から伝わってくる。
 それが、二度。
 何がどうなっているのか。
 ――知らなければならない。

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