52、さざなみ 

2006年5月25日 100題
・真回宗

 それは小さいことだ。
 しかし、ソウは赤の始末をしばし忘れた。

 ソウのあってないような心にさざなみが立つ。

 ソウの左眼には石が減り込んでいた。 
 狙い澄まされたような石の投擲。神業か、奇跡か。投擲者は何十メートルも離れた場所から石を投げ、ソウの眼に当てた。あり得ないことである。
 同時に、(本当に狙ったとしたなら?) ソウは投擲者に興味を持った。これは早々に赤を始末する必要が……。

「姉さん!」

 投擲者(弟)の「声」は音速で放たれ、サエの耳に届いた。声に反応し、サエの体はビクリと大きく震えた。
 少し遅れてソウの右眼には二発目の石が減り込む。さらにソウは、胸をサエの赤の足、しかも渾身で蹴られた。ありえない回転で
ふっとんでいくソウ。
 少々、むごかった。
 ビル内に響くサエの声。

「『姉さん』だと! 『姉』と呼べ!」

 張り詰められていた何かは切れていた。
 再びサエの時間は動き出した。
 そしてサエはもう一言。

「寒気がする!」

 辛辣である。

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