・高橋冴

 今も。

 少しずつ消えていくシラセの血煙。広がる赤い水溜り。水溜りに沈んだ、青く冷たくなっていくシラセの亡骸。気絶しているが呼吸はしているユウリ。破壊、戦い、死を求める黒く禍々しいモノ。

 サエの時間は止まっていた。

 人の温かさを持たないソウの手に首をつかまれ、そのまま持ち上げられる。死が直面しても、サエの時間は動かない。
 シラセの時間が止まったとき、サエの時間もまた止まってしまった。

 それほど、親しかったわけでもない。

  私の前にでるシラセの背中。、何故、そんなことを?

 無論、好きだったわけでもない。

  誰かの為に命を迷わず投げ出すシラセ。、何故、迷わないの?

 シラセのこと、深く知っていたわけでもなかった、……けど。

  何かに一途に、意志を曲げなかった、シラセ。、どうして?

 どうして?
 彼の死は、驚くほどあっけなかった。
 彼は本当に、死んでしまった。
 彼はあまりにも、報われることがなかった。

 彼のことを、遂に深く知ることはできなくなってしまった。

 そう思ってしまってから、サエの時間は止まった。

 そして、そのタイムラグは致命的だった。

「つまらないな」

 ソウは言いながら、赤の発現者の首を絞める手に力を込める。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索