いつのまにか映画館の闇の部分には無数の眼。
どれも暗く怪しく光り、僕を見つめている。
世界を埋め尽くすほどの黒い影達の憎悪の眼だ。

――その実は、助けを求めている。

助けて、死にたくない、生きたい。
戻りたい、人に戻りたい、戻りたい。
失った悲しみ、苦しみ。
存在することの悲しみ、絶望。

ああ、これが「世界」なんだな。
漠然と認識する。

「お前の中の□□□○○○の記憶は調整して抑えてやろう。
 お前がお前として生きていけるように。
 これ以上の説明は無駄だから省くぞ。
 どうせ忘れる」

コウキさんがそう言っていたことも思い出した。

「……ま、思い出すこともあるかもしれないが」

その後普通の学生になったことも思い出した。

僕、シラセエイスケは。
左利き、トマトが好き、音楽も好きだった。
夜が苦手だった。虫も苦手だった。
学校が好きだった。休日が好きだった。
毎日を生きることが楽しかった。

世界を壊したあの日のことも思い出した。

――自分がクローンだったことも

何か、大切なことを、忘れているような

憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め

思考が切れる。

憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め

その声は、魂の奥底にまで響く。

憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め、憎め

憎め……

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