・真回宗(シンカイソウ)

赤い花を咲かせながら、飛ばされることなく静かに倒れ、血の海に沈む少年。
心臓と肺を一度になくした少年。
私が殺した、少年。

血の海の中で静かに少年は死んでいた。
痙攣もなく、穏やかな死に顔で。

その死に様を見て、私は久しぶりに感動を覚えた。
痙攣がない、少年の肉体は生きることに執着しない。
穏やかな死に顔、少年の精神は死ぬことを恐れていない。

素晴らしい。
その潔さ、その意志は賞賛に値する。
五体満足で戦ってみたかった。
必死に生にすがる姿も見てみたかった。

――まぁ、良いか。
所詮、済んだこと。
彼は運が悪かった。
ここで、ゲームオーバーだ。

――同じように、誰かを救うために、死んだ男がいたこと。
腹に穴を開けて、腕と足を失い、それでも尚、その誰かを救えて「良かった」と思っていた。そんな男がいたこと。
一瞬、脳裏に浮かんだ。

しかし、どうでもいいことだった。

――その男は死んだのだから。

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