41、メロディー 【めろでぃー】
2006年5月15日 100題 コメント (1)黒い物体が傷口から噴出す。
焼け爛れた皮膚が剥がれ落ち、新しい物体と入れ替わる。
相変わらず血は出ない。
その光景に現実感はない。
「私は人ではない」
口と喉と肺が再生した瞬間、ソウは呟いた。
「だから私を殺すことは、出来ない」
黒い物体は生物のように噴出し、動き、ソウという人のカタチを作っていく。
わかっている、ソウ、いや、「色」は殺すことは、できない。
「色」なのだから。
ソウはその「色」そのもの。
ソウは「人」ではなく、「色」。
この狂った世界は、人が色を作ることだけではなく、色が人を作ることも可能にしたのだ。
しかし、色に作られた人を、僕達、人は、
人とは認めない
ちょっと悲しい結論に至ったような気がした。
しかし、浸らずに、体が全て再生したソウの動きを直感。
ソウの目的は戦いのみ。
ソウの眼には今、一番強い者。
サエさん。
僕はその時、直感のみに従った。
気絶しているユウリさんを置いて、走る。
ソウが動き出す前に動かなければ、間に合わない。
ソウの豪腕は死の塊。
決して揺るがない破壊の意志の塊。
触れるだけでも僕は死ぬ。
そのソウの暴力を向けられて、眼を見開くサエさん。
僕は彼女を背に、禍々しき黒の前に立ちはだかった。
死が眼前に迫る。
背中で誰かが叫んでいる。
やはり、死は恐くなかった。
ただ、ソウの腕が、僕を貫けば
黒 に 染 ま っ て し ま うのではないかと
それだけが……。
ソウの単純な暴力、しかし必殺の右ストレートを、無駄と知りながら僕は義手で受けようとする。
その時のソウの攻撃の速さは、僕になど捉えることも許さないはずだった。
……神か何かが、死に行く僕へ最期に思う時間をくれたのだろうか。
全ての時間が、ゆっくりと進んでいる。
義手の手のひらの部品が、ソウの拳に触れないうちに衝撃だけで四方にゆっくりと飛び散った。
その衝撃に耐えられなかったのか、義手は肘から部品がもげた。
もげた部分から出たコードの色は鮮やかだった。
ソウの表情は喜びのまま。
そのままゆっくりと、ソウの右腕は僕の胸に迫ってきた。
それを認識しても、僕は体を動かすつもりはなかった。
動かしたとしても、その行動を終えるまでの間に僕は死んでいるだろう。
そんな悪あがきはせず、僕は死を受け止める。
何故だろう?
……知らないはずのメロディー
……懐かしい、メロディーが……
……聞こえるから?
--------------------
・高橋冴
予想外の速さで、ソウは私に迫った。
もしソウがそのまま私を殺しても、(油断した私が悪い)そう思って納得できた。
しかし、今、彼が、何故か、(何故?)私を庇うように、目の前に、立っていた。(何故?)
少し前にもこんなことがあった。
あの時と違うのは、彼にはもう右腕がないことと、
私が、彼、つまりシラセエイスケのことを知ったこと。
右腕がない、どうする? 彼なら、どうする?
いつも、彼は自分を一番に犠牲にする。
いつも、彼は他人のことを優先する。
いつも、彼は死を恐れない。
いつか、彼は
「いやあああああ!」
自分でも驚くほどの女々しい悲鳴。
ボン
その形は一瞬だった。
けど、私の眼には確かに映った。
衝撃の形に合わせて幾重にも重なった丸を描いた鮮血は
彼の細い背中に咲く
まるで真っ赤なバラの花のようだった。
焼け爛れた皮膚が剥がれ落ち、新しい物体と入れ替わる。
相変わらず血は出ない。
その光景に現実感はない。
「私は人ではない」
口と喉と肺が再生した瞬間、ソウは呟いた。
「だから私を殺すことは、出来ない」
黒い物体は生物のように噴出し、動き、ソウという人のカタチを作っていく。
わかっている、ソウ、いや、「色」は殺すことは、できない。
「色」なのだから。
ソウはその「色」そのもの。
ソウは「人」ではなく、「色」。
この狂った世界は、人が色を作ることだけではなく、色が人を作ることも可能にしたのだ。
しかし、色に作られた人を、僕達、人は、
人とは認めない
ちょっと悲しい結論に至ったような気がした。
しかし、浸らずに、体が全て再生したソウの動きを直感。
ソウの目的は戦いのみ。
ソウの眼には今、一番強い者。
サエさん。
僕はその時、直感のみに従った。
気絶しているユウリさんを置いて、走る。
ソウが動き出す前に動かなければ、間に合わない。
ソウの豪腕は死の塊。
決して揺るがない破壊の意志の塊。
触れるだけでも僕は死ぬ。
そのソウの暴力を向けられて、眼を見開くサエさん。
僕は彼女を背に、禍々しき黒の前に立ちはだかった。
死が眼前に迫る。
背中で誰かが叫んでいる。
やはり、死は恐くなかった。
ただ、ソウの腕が、僕を貫けば
黒 に 染 ま っ て し ま うのではないかと
それだけが……。
ソウの単純な暴力、しかし必殺の右ストレートを、無駄と知りながら僕は義手で受けようとする。
その時のソウの攻撃の速さは、僕になど捉えることも許さないはずだった。
……神か何かが、死に行く僕へ最期に思う時間をくれたのだろうか。
全ての時間が、ゆっくりと進んでいる。
義手の手のひらの部品が、ソウの拳に触れないうちに衝撃だけで四方にゆっくりと飛び散った。
その衝撃に耐えられなかったのか、義手は肘から部品がもげた。
もげた部分から出たコードの色は鮮やかだった。
ソウの表情は喜びのまま。
そのままゆっくりと、ソウの右腕は僕の胸に迫ってきた。
それを認識しても、僕は体を動かすつもりはなかった。
動かしたとしても、その行動を終えるまでの間に僕は死んでいるだろう。
そんな悪あがきはせず、僕は死を受け止める。
何故だろう?
……知らないはずのメロディー
……懐かしい、メロディーが……
……聞こえるから?
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・高橋冴
予想外の速さで、ソウは私に迫った。
もしソウがそのまま私を殺しても、(油断した私が悪い)そう思って納得できた。
しかし、今、彼が、何故か、(何故?)私を庇うように、目の前に、立っていた。(何故?)
少し前にもこんなことがあった。
あの時と違うのは、彼にはもう右腕がないことと、
私が、彼、つまりシラセエイスケのことを知ったこと。
右腕がない、どうする? 彼なら、どうする?
いつも、彼は自分を一番に犠牲にする。
いつも、彼は他人のことを優先する。
いつも、彼は死を恐れない。
いつか、彼は
「いやあああああ!」
自分でも驚くほどの女々しい悲鳴。
ボン
その形は一瞬だった。
けど、私の眼には確かに映った。
衝撃の形に合わせて幾重にも重なった丸を描いた鮮血は
彼の細い背中に咲く
まるで真っ赤なバラの花のようだった。
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