初めて夜空を見た。
黒というより濃い青の空には、微妙に色合いが違う星々。
月光に照らされた草木は、青白い光に包まれていた。
草を踏む音。
風を切る音。
虫が鳴く音。
無数の足音。
耳を澄ますと、世界が広がる。
眼を凝らすと、深く沈める。
警告灯の赤。
月の白と青。
白衣を着た人。
自分の肌の色。
黒い髪。
深く優しい黒の夜。
潔癖の白い衣服を着た人。
走る僕。
引っ張る人。
追ってくる人。
走っている。
疲れる。

生きている。
 僕は生きている。

なんて、素晴らしいことだろう。
生まれたとき。
それ以上の感動を、人は死ぬまでに……もう一度でも……味わえるのだろうか。

ただ観るだけだった僕は、感動していた。
本当に、感動していた。

スクリーンにはプラネタリウムの下を走っている人影が二つ。
僕と、あの人。

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