僕達が1階についたときには、既にソウさんとキバさんの激しい戦いが繰り広げられていた。
キバさんの体全体には力強い褐色のオーラが、ソウさんの体全体には禍々しい黒色のオーラが見えた。

「素晴らしい」

そう言いながら、ソウさん「だった」人物は在り得ない威力の拳をキバさんに放つ。
キバさんはそれを紙一重でかわし、そのままその腕を掴んで床にたたきつけた。
ソウさんの腕は肩からもげた。
黒色の物体がソウさんの肩口から噴出す。
それを他人事のように見ていたソウさんは構わずキバさんに蹴りを放つ。
その蹴りもキバさんは片手で受け止めて平然としていた。
逆に蹴りに使った右足がまたしても床に叩きつけられ、ソウさんはバランスを崩した。

「おぉっ?」

変な方向に曲がった右足を見ながら、ソウさんは表情を喜びに変えて言った。

「重さ……質量の操作……またはそれに近いものだな。
 なるほど……手強い……戦い甲斐がある」

油断していたとはいえサエさんを一撃で倒した初老の男性は今床に倒れている。
キバさんの戦闘能力はズバ抜けていた。

「すっかり、染まってしまったんですね」

悲しそうに、それでも抑揚なく、キバさんは言った。
ソウさんは折れ曲がった右足を左手の手刀で切断した。
やはり血は出ず、黒色の物体が噴出す。
切断された右腕と右足は黒い霧となって霧散した。

「ああ、戦おう」

話で聞いたシンカイソウという人物はそこには居なかった。
ただ、戦いを求める者。

『戦い』

それはソウさんの意志ではないことが、一時期仲間だった3人の表情の中に窺えた。
何がソウさんをここまで変えたのか。
死の瞬間、ソウさんは何をみたのだろうか。
黒色の物体がソウさんの腕と足をカタチ作っていく。
黒。
破壊、吸収、死、武勇等を象徴する、黒。

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