「シラセ、お前……その髪、どうした?」

シュウさんが少し驚いた声で僕に尋ねる。

え?

一体どういうことだろう。

「自分では分からないのか?
 右目の上辺りの髪だけが、根元まで真っ白に染まってるぞ」

……?
髪の色は白が発現する前も後もずっと黒だったはずだ。
右目の上の髪を伸ばして目の前まで持っていきたかったが、義手では髪を掴むという繊細な作業はできない上に、右目は失明していた。直接見るのは難しい。
髪の色が変わったことぐらい、それほど大したことでもないと思い、確認するのは止めた。
カイくんはもしかして、唐突に色が変わった僕の髪に驚いたのだろうか?

「色の影響が強くなっているんですよ」

突然、ユウリさんが発言した。
カイくんはユウリさんの体で顔を隠している。

色の影響……?
今や「色」は身体や精神……いや世界と密接な関係にある。
僕は「色」についての事柄を、全くと言っていいほど知らなかったという事に気付いた。
人が黒い影になったり、自分の右腕がなくなったり、親友が化け物に近くなったりしたのは、「色」がかなり関係しているというに。

「色は肉体や精神に影響することがあります。
 髪や瞳の色が変わるのは、表面に出る色の影響の一つです」

そう言うと、ユウリさんは部屋の中央に置かれていたローソクの芯をつまんだ。
少し待つと、一瞬ユウリさんの指が炎に包まれた。
僕は驚いたが、当のユウリさんは涼しい顔をしてローソクの炎からそっと指を離した。

ローソクの炎が、暗くなってきた部屋を照らした。
僕とローソクの間に立つユウリさんの表情は見えない。

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