ずーっと観察していた。
右腕のない人の寝顔は、安らかだった。
いつ消えてもおかしくないと思った。
儚かった。
だから僕は、呟いた。

「蜻蛉の命」

「こら。
 人の顔見ながらなんてこと言うの」

橙色の髪でショートカット、西城悠里(サイジョウユウリ)姉さんに怒られた。
ちなみに茶髪のスポーツ刈り、大柄なお兄さんは灰牙(ハイキバ)と名乗っている。偽名っぽい。
そして僕は山川海(ヤマカワカイ)。
よろしくね……って僕は誰に言ってるんだろう。

「お前の能力でもそいつは治せないか?」

牙兄さんが言った。

「外傷は大丈夫だけど……問題は中身……」

答えたが、要するに、治せないということだ。
悔しかった。

青系の色程詳しくは洞察できない。
けど、緑系である僕でも解る。
この人、助からない。
色々な怪我や病気や傷が積み重なっている。

「だから、蜻蛉の命」

「こら」

ユーリ姉さんのチョップが僕の帽子の形を崩した。
僕は右腕のない人の顔を見つめたまま帽子の形を直した。

もうすぐこの人は、死ぬか、

……になるか

どちらかだ。

コメント

ざるうどん
ざるうどん
2006年4月30日0:01

見直し前に読んだー!!

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