25、蜻蛉 【かげろう】
2006年4月29日 100題 コメント (1)ずーっと観察していた。
右腕のない人の寝顔は、安らかだった。
いつ消えてもおかしくないと思った。
儚かった。
だから僕は、呟いた。
「蜻蛉の命」
「こら。
人の顔見ながらなんてこと言うの」
橙色の髪でショートカット、西城悠里(サイジョウユウリ)姉さんに怒られた。
ちなみに茶髪のスポーツ刈り、大柄なお兄さんは灰牙(ハイキバ)と名乗っている。偽名っぽい。
そして僕は山川海(ヤマカワカイ)。
よろしくね……って僕は誰に言ってるんだろう。
「お前の能力でもそいつは治せないか?」
牙兄さんが言った。
「外傷は大丈夫だけど……問題は中身……」
答えたが、要するに、治せないということだ。
悔しかった。
青系の色程詳しくは洞察できない。
けど、緑系である僕でも解る。
この人、助からない。
色々な怪我や病気や傷が積み重なっている。
「だから、蜻蛉の命」
「こら」
ユーリ姉さんのチョップが僕の帽子の形を崩した。
僕は右腕のない人の顔を見つめたまま帽子の形を直した。
もうすぐこの人は、死ぬか、
……になるか
どちらかだ。
右腕のない人の寝顔は、安らかだった。
いつ消えてもおかしくないと思った。
儚かった。
だから僕は、呟いた。
「蜻蛉の命」
「こら。
人の顔見ながらなんてこと言うの」
橙色の髪でショートカット、西城悠里(サイジョウユウリ)姉さんに怒られた。
ちなみに茶髪のスポーツ刈り、大柄なお兄さんは灰牙(ハイキバ)と名乗っている。偽名っぽい。
そして僕は山川海(ヤマカワカイ)。
よろしくね……って僕は誰に言ってるんだろう。
「お前の能力でもそいつは治せないか?」
牙兄さんが言った。
「外傷は大丈夫だけど……問題は中身……」
答えたが、要するに、治せないということだ。
悔しかった。
青系の色程詳しくは洞察できない。
けど、緑系である僕でも解る。
この人、助からない。
色々な怪我や病気や傷が積み重なっている。
「だから、蜻蛉の命」
「こら」
ユーリ姉さんのチョップが僕の帽子の形を崩した。
僕は右腕のない人の顔を見つめたまま帽子の形を直した。
もうすぐこの人は、死ぬか、
……になるか
どちらかだ。
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