16、陽射し 【ひざし】
2006年4月20日 100題 コメント (3)闇の空間。
居心地は良い。
だが、物足りない。
人のカタチに戻るのに……まだ数時間、
抜け出すのには……数日かかる……。
土砂崩れ……谷……
くくく……面白かった……が……
あの……青…… 必ず壊す。
---------------------
後ろを振り向いた。
一部が崩れた山は遠く、見えない。
・
・
・
虹を見た後、高橋家に行くことになった。
見事に土石流によって全壊していた。
怒り狂うかと思われたサエさんは、少し目に涙を浮かべて、
「今までありがとう」
と言って礼をした。
「姉よ……気を落とすな」
シュウさんは神妙な顔つきでサエさんの肩に手を置いた。
「形ある物はいつか色褪せて……崩れる。
そう……家も……山も……人も……もちろん姉も」
「…………とりあえず死ね」
※省略
「これから、何処に行くつもりだ?」
はい、旅にでも出ます。
あてもない旅に。
「違うな、もっと力が必要なんだろう?」
……流石、姉弟だ。
半端な嘘どころか、些細な嘘も時々見抜かれる。
今、土石流から脚だけをだしてぐったりしているシュウさんの青の眼ならともかく、サエさんはまた違う何らかの方法で僕の些細な嘘を見破った。
「図星……だな。
また、あいつと戦うつもりだろう?」
高橋姉弟には嘘をつけない。
ちょっと微笑んで、僕は歩き出そうとした。
「待て……。
…………やる」
え?
すみません……。
よく聞こえませんでした。
「力が必要なら、力が足りないなら、補えばいいだろう!
……私が力になってやる!」
サエさんは言い切ると、耳まで顔を真っ赤にして、いきなり脚だけ出ているシュウさんに向かって走り出した。
僕はただ、驚くばかりである。
「何をやっている! シュウ! さっさと起きろ!」
言いざま、土石流ごとシュウさんを蹴り上げる。
土や岩とシュウさんが宙に舞い上がる。
「姉よ……俺を土石流に突っ込んだのは姉だよ。
それと、照れ隠しに人を蹴らないでく……
最後まで言えず、シュウさんは地面に激突した。
砂煙が辺りに漂っている。
だ……大丈夫ですか……。
「大丈夫だ、慣れている……。
俺も力になるぞ、シラセ。
まず、姉の弱点はな……」
そういう力になられても……。
シュウさんの後ろには逆光によって表情が読めないサエさんが立っていた。
・
・
・
黒部の声が聞こえたような気がした。
僕一人では、また止められなかった。
力がまだまだ足りない。
また、後ろを振り向く。
赤く長い髪をしばり、ラフな服装で颯爽と歩いているサエさん。
「勘違いするなよ。
私がついていくのは、これは、あれだ。 助けてもらった借りもあるしな。
もっと力をつけてあの黒部とかいうやつにリベンジもしなければならないんだ。
決して勘違いするんじゃないぞ!」
は、はい……
戸惑い気味に返事をするしかない。
顔に所々あざと腫れができていて、上半身より大きいリュックを背負って今にも死にそうな足取りのシュウさん。
「姉は年下との恋でも覚えて、もう少し女性らしくなってくれるといいのだが……」
こうしてまた、シュウさんのあざが一つ増える。
……足りないなら、補えば良いだろう。
夏。
セミが五月蝿く鳴いている。
赤い空が一層世界の温度を上げている気がする。
陽射しが肌にちくちくと突き刺さる。
黒部、また、力を……
そして「仲間」を集めたら……
今度こそ、君を、止めるよ。
久しぶりに、僕の心は晴れやかだった。
居心地は良い。
だが、物足りない。
人のカタチに戻るのに……まだ数時間、
抜け出すのには……数日かかる……。
土砂崩れ……谷……
くくく……面白かった……が……
あの……青…… 必ず壊す。
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後ろを振り向いた。
一部が崩れた山は遠く、見えない。
・
・
・
虹を見た後、高橋家に行くことになった。
見事に土石流によって全壊していた。
怒り狂うかと思われたサエさんは、少し目に涙を浮かべて、
「今までありがとう」
と言って礼をした。
「姉よ……気を落とすな」
シュウさんは神妙な顔つきでサエさんの肩に手を置いた。
「形ある物はいつか色褪せて……崩れる。
そう……家も……山も……人も……もちろん姉も」
「…………とりあえず死ね」
※省略
「これから、何処に行くつもりだ?」
はい、旅にでも出ます。
あてもない旅に。
「違うな、もっと力が必要なんだろう?」
……流石、姉弟だ。
半端な嘘どころか、些細な嘘も時々見抜かれる。
今、土石流から脚だけをだしてぐったりしているシュウさんの青の眼ならともかく、サエさんはまた違う何らかの方法で僕の些細な嘘を見破った。
「図星……だな。
また、あいつと戦うつもりだろう?」
高橋姉弟には嘘をつけない。
ちょっと微笑んで、僕は歩き出そうとした。
「待て……。
…………やる」
え?
すみません……。
よく聞こえませんでした。
「力が必要なら、力が足りないなら、補えばいいだろう!
……私が力になってやる!」
サエさんは言い切ると、耳まで顔を真っ赤にして、いきなり脚だけ出ているシュウさんに向かって走り出した。
僕はただ、驚くばかりである。
「何をやっている! シュウ! さっさと起きろ!」
言いざま、土石流ごとシュウさんを蹴り上げる。
土や岩とシュウさんが宙に舞い上がる。
「姉よ……俺を土石流に突っ込んだのは姉だよ。
それと、照れ隠しに人を蹴らないでく……
最後まで言えず、シュウさんは地面に激突した。
砂煙が辺りに漂っている。
だ……大丈夫ですか……。
「大丈夫だ、慣れている……。
俺も力になるぞ、シラセ。
まず、姉の弱点はな……」
そういう力になられても……。
シュウさんの後ろには逆光によって表情が読めないサエさんが立っていた。
・
・
・
黒部の声が聞こえたような気がした。
僕一人では、また止められなかった。
力がまだまだ足りない。
また、後ろを振り向く。
赤く長い髪をしばり、ラフな服装で颯爽と歩いているサエさん。
「勘違いするなよ。
私がついていくのは、これは、あれだ。 助けてもらった借りもあるしな。
もっと力をつけてあの黒部とかいうやつにリベンジもしなければならないんだ。
決して勘違いするんじゃないぞ!」
は、はい……
戸惑い気味に返事をするしかない。
顔に所々あざと腫れができていて、上半身より大きいリュックを背負って今にも死にそうな足取りのシュウさん。
「姉は年下との恋でも覚えて、もう少し女性らしくなってくれるといいのだが……」
こうしてまた、シュウさんのあざが一つ増える。
……足りないなら、補えば良いだろう。
夏。
セミが五月蝿く鳴いている。
赤い空が一層世界の温度を上げている気がする。
陽射しが肌にちくちくと突き刺さる。
黒部、また、力を……
そして「仲間」を集めたら……
今度こそ、君を、止めるよ。
久しぶりに、僕の心は晴れやかだった。
コメント
ツンデレというのは以下略
ところでまたミスを発見しましたでござるよ
>>俺も力になるぞ、シュウ。
白瀬君がしゅうくんになっていました
申し訳ありません、私にはツンデレは無理です!