14、虹 【にじ】(前)
2006年4月17日 100題 コメント (2)バケツをひっくり返したような雨が降っている。
……こころなしか雨の勢いがまだ増しているような。
「まさにこの雨は天の助けだな。
くくく……」
シュウさんはニヤニヤ笑いを隠そうともせず、嬉しそうに言った。
僕はその言葉に同意しかねたが、眼も開けられない程の雨が降り、人一人背負い、黒部に追われながらも、なおこの余裕。
どうにかできる。
シュウさんには何か確信めいたものがある。
確実に、黒部から逃げ切れる方法がある。
漠然とそう思った。
「ああ、この雨は俺たちが逃げ切るには絶好だ。
が……運を天に任せる部分がかなり多い!」
たはっとお茶目に笑うシュウさん。
僕は天を仰いだ。
なんてこった……。
結局運任せなのか……。
「この世に完璧など存在しないんだよ。
天は自らを助くるものを助く。
きっと大丈夫。逃げ切れるさ」
失敗すれば天に召されることになるだろうね。
「成功すれば天にも昇る心地……だろうよ」
なるほど。
しかし……
衝撃音や何かを引きちぎる音、なんとも表現しにくい、一言で言えば破壊音が後方からやってきた。
「おお、おお……自然破壊しながら追ってきたぜ。
きっとヤツには天罰が落ちる」
同時に、ゴゴゴ、と神の怒りのような地鳴りが聞こえた。
「そこは天の怒りにしようよ」
どっちでもいい。
地鳴りにわずかな地震が加わり、右腕がないのでバランスがとれず、倒れてしまいそうだった。
「まだ大丈夫……まだ大丈夫」
そう言いながら、シュウさんはいきなり方向を変えて、黒部のいる方向を向いた。
え、ちょっと待って……
「もちろん自殺しに行くわけじゃない。
黒部より下側の斜面を走り抜けるぞ。
幸いあいつの移動速度は化け物じみてない。
死ぬ気で走れ!」
確かに黒部が人のカタチを保っているならば、それも可能だろう。
……運を天に任せる。
とにかく今は、シュウさんの言葉を信じるしかない。
(特に逃げ切れる の部分)
-------------------
色がついている。
それだけのことで、いちいち森を破壊しながら進まないといけないのは面倒だった。
黒部はイライラしながらも破壊をやめなかった。
森の木々をひたすら折り、倒し、根こそぎ引き抜き、破壊した。
破壊、破壊、破壊。
本能、いや、自分の色に従うまま、破壊破壊破壊。
木々を壊すたびに泥がはねる。
どしゃ降りの雨を冷たいと思う感覚はない。
破壊。
急にうっすらと見えていた青が方向を変えた。
こっちに向かってくる。
何故?
まあ、いい。 とりあえず破壊だ。
---------------------
腹をすかせたライオンの前を横切る心境だ。
木々の間から一瞬、禍々しく黒い存在が見えた気がした。
見えた。見えちゃったよ。
高橋秋は内心穏やかではなかった。
色が青……理性、冷静を表すと言っても高橋秋は高橋秋だ。
ということで、怖いものは、怖い。
ひたすら、懸命に走る。
ライオンから逃げる草食動物の心境だ。
シラセは後ろをぴったりとついてきている。
青の眼で見ると、華奢に見える肉体が、どれほど鍛え上げられたものなのか、傷ついたものなのか、解ってしまった。
シラセは限界が近い。いろいろな意味で。
しかし、今はそれでも、シラセがついてくることを信じるしかなかった。
雨はますます増した。
土の性質や木々の種類、山の地形。
そして黒い奴が自ら破壊した木々。
天を仰いで唾する。
まさに自業自得だ。化け物。
3
雨によって地面には水が染み込み、土を支える植物の根が大量に失われた。
2
それによって地盤がゆるみ、
まあ、簡単に言えば
1
土砂崩れが起きた。
後編に続く(待
……こころなしか雨の勢いがまだ増しているような。
「まさにこの雨は天の助けだな。
くくく……」
シュウさんはニヤニヤ笑いを隠そうともせず、嬉しそうに言った。
僕はその言葉に同意しかねたが、眼も開けられない程の雨が降り、人一人背負い、黒部に追われながらも、なおこの余裕。
どうにかできる。
シュウさんには何か確信めいたものがある。
確実に、黒部から逃げ切れる方法がある。
漠然とそう思った。
「ああ、この雨は俺たちが逃げ切るには絶好だ。
が……運を天に任せる部分がかなり多い!」
たはっとお茶目に笑うシュウさん。
僕は天を仰いだ。
なんてこった……。
結局運任せなのか……。
「この世に完璧など存在しないんだよ。
天は自らを助くるものを助く。
きっと大丈夫。逃げ切れるさ」
失敗すれば天に召されることになるだろうね。
「成功すれば天にも昇る心地……だろうよ」
なるほど。
しかし……
衝撃音や何かを引きちぎる音、なんとも表現しにくい、一言で言えば破壊音が後方からやってきた。
「おお、おお……自然破壊しながら追ってきたぜ。
きっとヤツには天罰が落ちる」
同時に、ゴゴゴ、と神の怒りのような地鳴りが聞こえた。
「そこは天の怒りにしようよ」
どっちでもいい。
地鳴りにわずかな地震が加わり、右腕がないのでバランスがとれず、倒れてしまいそうだった。
「まだ大丈夫……まだ大丈夫」
そう言いながら、シュウさんはいきなり方向を変えて、黒部のいる方向を向いた。
え、ちょっと待って……
「もちろん自殺しに行くわけじゃない。
黒部より下側の斜面を走り抜けるぞ。
幸いあいつの移動速度は化け物じみてない。
死ぬ気で走れ!」
確かに黒部が人のカタチを保っているならば、それも可能だろう。
……運を天に任せる。
とにかく今は、シュウさんの言葉を信じるしかない。
(特に逃げ切れる の部分)
-------------------
色がついている。
それだけのことで、いちいち森を破壊しながら進まないといけないのは面倒だった。
黒部はイライラしながらも破壊をやめなかった。
森の木々をひたすら折り、倒し、根こそぎ引き抜き、破壊した。
破壊、破壊、破壊。
本能、いや、自分の色に従うまま、破壊破壊破壊。
木々を壊すたびに泥がはねる。
どしゃ降りの雨を冷たいと思う感覚はない。
破壊。
急にうっすらと見えていた青が方向を変えた。
こっちに向かってくる。
何故?
まあ、いい。 とりあえず破壊だ。
---------------------
腹をすかせたライオンの前を横切る心境だ。
木々の間から一瞬、禍々しく黒い存在が見えた気がした。
見えた。見えちゃったよ。
高橋秋は内心穏やかではなかった。
色が青……理性、冷静を表すと言っても高橋秋は高橋秋だ。
ということで、怖いものは、怖い。
ひたすら、懸命に走る。
ライオンから逃げる草食動物の心境だ。
シラセは後ろをぴったりとついてきている。
青の眼で見ると、華奢に見える肉体が、どれほど鍛え上げられたものなのか、傷ついたものなのか、解ってしまった。
シラセは限界が近い。いろいろな意味で。
しかし、今はそれでも、シラセがついてくることを信じるしかなかった。
雨はますます増した。
土の性質や木々の種類、山の地形。
そして黒い奴が自ら破壊した木々。
天を仰いで唾する。
まさに自業自得だ。化け物。
3
雨によって地面には水が染み込み、土を支える植物の根が大量に失われた。
2
それによって地盤がゆるみ、
まあ、簡単に言えば
1
土砂崩れが起きた。
後編に続く(待
コメント
ミスを発見したぜ! ミスなのか不安になってきました。
ありがとうございます。