13、通り雨 【とおりあめ】
2006年4月16日 100題冷たい水滴が顔に当たった。
雨だ。
思いのほか水滴は重く、痛かった。
雨粒が大きい。
湖に波紋が増えていく。
「相手は化け物でも……」
少し考え込み、シュウさんは真剣な顔で僕に言った。
「ま、逃げることは可能だろう」
……
ザッ、と一気に雨の勢いは増し、湖で大量の水滴が踊る。
「まずは、こっちだ」
シュウさんはサエさんを背負い、森の中に再び入った。
僕もそれに続いた。
「どうするんですか?」
あまりに確信に満ち、迷いのない顔で行動をするので、口を挟むつもりはなかった。
しかし、気になる。
あの黒部を、どうするのか。
「どうやら俺の能力は……知恵の向上……っぽい」
本当に向上したのだろうか?
「何故か自分の事はわからないけど……
黒い奴がここから東南2320mのところまで迫ってるってこと、
正確にこっちを目指していること、
この通り雨はあと24分ほど降り続くこと、
この山の地形、姉とお前の健康状態、ぐらいはわかるな」
なるほど。
逃げるのには最適ですね。
「そういうことだ。
……これだけ近いと黒いヤツが俺たちに追いつくのは時間の問題だ」
ふらふらの僕と人一人背負ったシュウさんでは、ね。
「そうだ。
だから、悪あがきをしてみる」
シュウさんは上をちらっと見て、いたずらを考え付いた子供のように笑った。
森の道は突然のどしゃ降りによってぬかるみ、滑りやすくなっている。
が、どうしてかシュウさんは足場の悪い道を選んで進んでいる。
シュウさんの青い眼はぬかるんだ道など見てはいない。
違う何かを見ていた。
「あいつの速度は……今後の雨の量……方向……風ナシ……樹木、根、角度、重さ……可能性……うん、いける」
シュウさんの『青』がますます深い青になった気がした。
雨だ。
思いのほか水滴は重く、痛かった。
雨粒が大きい。
湖に波紋が増えていく。
「相手は化け物でも……」
少し考え込み、シュウさんは真剣な顔で僕に言った。
「ま、逃げることは可能だろう」
……
ザッ、と一気に雨の勢いは増し、湖で大量の水滴が踊る。
「まずは、こっちだ」
シュウさんはサエさんを背負い、森の中に再び入った。
僕もそれに続いた。
「どうするんですか?」
あまりに確信に満ち、迷いのない顔で行動をするので、口を挟むつもりはなかった。
しかし、気になる。
あの黒部を、どうするのか。
「どうやら俺の能力は……知恵の向上……っぽい」
本当に向上したのだろうか?
「何故か自分の事はわからないけど……
黒い奴がここから東南2320mのところまで迫ってるってこと、
正確にこっちを目指していること、
この通り雨はあと24分ほど降り続くこと、
この山の地形、姉とお前の健康状態、ぐらいはわかるな」
なるほど。
逃げるのには最適ですね。
「そういうことだ。
……これだけ近いと黒いヤツが俺たちに追いつくのは時間の問題だ」
ふらふらの僕と人一人背負ったシュウさんでは、ね。
「そうだ。
だから、悪あがきをしてみる」
シュウさんは上をちらっと見て、いたずらを考え付いた子供のように笑った。
森の道は突然のどしゃ降りによってぬかるみ、滑りやすくなっている。
が、どうしてかシュウさんは足場の悪い道を選んで進んでいる。
シュウさんの青い眼はぬかるんだ道など見てはいない。
違う何かを見ていた。
「あいつの速度は……今後の雨の量……方向……風ナシ……樹木、根、角度、重さ……可能性……うん、いける」
シュウさんの『青』がますます深い青になった気がした。
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