5、道路 【どうろ】
2006年4月8日 100題1週間同じ光景が続いていても飽きはしない。
最早その光景は網膜に張り付いているので、飽きたとか飽きないとか何かを考えるのは無駄だ。
赤と灰色の世界。
僕、白瀬英輔は……(自分の名前さえ忘れそうだ)
黒部洋(親友だ、確か)を探していた。
アスファルトの道路を歩く。
思えば、平凡な僕は誰かに舗装された道しか歩いてこなかったな。
何の脈絡もなくそう思った僕は、舗装のされていない道を探そうとして。
ズゥウウン、と地面が揺れるほどの音と衝撃を感じたのはその時だった。
そう遠くはない場所で、何かがあった。
音、衝撃の本へ迷わず走り出す。
空の赤が濃くなってきた。
時計があったならば多分6時ごろを指していただろう。
目の前で信じられない光景が繰り広げられていた。
普通の人間ならば歯が立たないはずの黒い影が、一人の※女性※に蹴り飛ばされていた。
かかと落とし、ロー、ミドル、ハイキック。
女性の蹴りが黒い影に命中するたび、物凄い音と衝撃が大気と大地を揺らした。
目にも留まらぬ猛スピードで猛威力のキックを……痛そう。
最後にトドメの回し蹴り。
これはトドメなだけに、最大級(当社比・推測)の威力だった。
黒い影は芸術的に吹っ飛ばされ、瓦礫にあたりながらはるか彼方に消えていった。
女性ははぁっと息を吐くと、蹴りのフィニッシュで止めていた足を下ろした。
よくみると彼女の両足は、ほのかに赤く光っていた。
「黒い影を蹴飛ばせる姉を持つ弟は、世界で俺だけだろうな」
突っ立っていただけの青年が言う。
「家を壊した罪は万死に値する。例え黒い影だろうが弟だろうがな」
声も容姿も確かに女性だ。
世界は広い。
「まて、俺は壊してないぞ」
どうやら軽い行違いがあるようだ。
ドアが壊れた家と、物凄く強い女性と、変な汗を流している青年が、薄暗闇に佇んでいた。
ちょっと離れたところに僕が立っている。
さらにその周りを大量の黒い影。
包囲完了ということか。
不思議と負ける気はしなかった。
最早その光景は網膜に張り付いているので、飽きたとか飽きないとか何かを考えるのは無駄だ。
赤と灰色の世界。
僕、白瀬英輔は……(自分の名前さえ忘れそうだ)
黒部洋(親友だ、確か)を探していた。
アスファルトの道路を歩く。
思えば、平凡な僕は誰かに舗装された道しか歩いてこなかったな。
何の脈絡もなくそう思った僕は、舗装のされていない道を探そうとして。
ズゥウウン、と地面が揺れるほどの音と衝撃を感じたのはその時だった。
そう遠くはない場所で、何かがあった。
音、衝撃の本へ迷わず走り出す。
空の赤が濃くなってきた。
時計があったならば多分6時ごろを指していただろう。
目の前で信じられない光景が繰り広げられていた。
普通の人間ならば歯が立たないはずの黒い影が、一人の※女性※に蹴り飛ばされていた。
かかと落とし、ロー、ミドル、ハイキック。
女性の蹴りが黒い影に命中するたび、物凄い音と衝撃が大気と大地を揺らした。
目にも留まらぬ猛スピードで猛威力のキックを……痛そう。
最後にトドメの回し蹴り。
これはトドメなだけに、最大級(当社比・推測)の威力だった。
黒い影は芸術的に吹っ飛ばされ、瓦礫にあたりながらはるか彼方に消えていった。
女性ははぁっと息を吐くと、蹴りのフィニッシュで止めていた足を下ろした。
よくみると彼女の両足は、ほのかに赤く光っていた。
「黒い影を蹴飛ばせる姉を持つ弟は、世界で俺だけだろうな」
突っ立っていただけの青年が言う。
「家を壊した罪は万死に値する。例え黒い影だろうが弟だろうがな」
声も容姿も確かに女性だ。
世界は広い。
「まて、俺は壊してないぞ」
どうやら軽い行違いがあるようだ。
ドアが壊れた家と、物凄く強い女性と、変な汗を流している青年が、薄暗闇に佇んでいた。
ちょっと離れたところに僕が立っている。
さらにその周りを大量の黒い影。
包囲完了ということか。
不思議と負ける気はしなかった。
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