「おい、鍵はどうした」
「なくした」
即答に拳の速攻で答える姉(28)独身。
「良いストレートだ。姉よ」
「黙れ弟、貴様、死にたいのか」
家の鍵をなくした俺に姉が怒るのも無理はない。
この家の鍵には合鍵というものがないからだ。
作ろうにも今の世界に合鍵屋などという悠長な商売はないに等しい。
何せまともに立っている建築物さえ少ないのだから。
その分俺と姉の家は貴重な文化遺産だろう。

「しかし、困ったな。家に入れない。どうしようか、お姉さん」
「お前の所為だろう、反省をしろ。探しに行け。地を舐めてでも探し出せ。さもなくば血の雨が降るであろう」

姉は一応性別は女であるが俺より強い、恐い、怖い。
世界が滅びそうになる前は県最強の強さを誇った俺でも敵わないとなれば、姉に勝てる男は一握りの一つまみだろう。

赤い空が濃さを増している。
今の時間は5時半〜6時といったところだ。
まともに動いている時計も少ない。

「それが、姉よ」
「死ぬか」
「行きます」

他にどう答えられようか。
俺が重い腰を上げて玄関前から立ち去ろう(逃げよう)とすると、

音もなく黒い影が視界に入った。

危険

瞬間、反射的に地面に伏せていた。
俺の顔が在った場所の後ろの、玄関のドアに黒い手がずぶずぶと入り込んでいる。
我ながら素晴らしい避けだな。
ドアは一部分が消失し、けたたましい音を立てて倒れた。
鍵どころの話ではなくなった。

危険

姉が物凄い怒りの形相です。

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