友達の黒部君が連れてきた薄気味悪い中年の指示に従って右腕を伸ばすと、何かが手に触れた。

その時、世界が揺れた。
僕が掴んだソレは物凄い勢いで僕を吸い込もうとした。
また吸い込まれるのを堪えるように、地面が、校舎が、世界が揺れている。
右腕がちょっと白く光ってきた。
甲高い振動音が耳から脳へあがってくる。
眼も開けていられない。

「掴んで」

言われるまま、流れのままにソレを掴む。
このままでは、ソレに吸い込まれると考えた僕は、ソレを掴み、

引き抜いた

すぽん!

小気味いい何かが抜ける音と共に、
ズ、と一瞬で全てが吸い込まれた。

大半の人々は「皮」を吸い取られて黒い影になった。
それは脱皮にも似ていた。
次々に人々が黒い影になった。
今まで人を人に保っていた「皮」と空の青は全てその何かが抜けた場所に吸い込まれていった。
青が消えた後、空には代わりに赤が広がっていた。
これが世界の本当の色だよ、と言うように。
今の世界のカタチができあがった。

僕は幸い、「皮」が剥がれなかったようだ。
人の姿のままだった。
黒い影になるのを間逃れた人間も稀ではあるがいた。

そして黒い影、いや、それはまるで色々な絵の具を混ぜて最終的にできる黒。
言わばぐちゃぐちゃに汚れた黒色の影は、色が有り、動くものを襲うようになった。

薄気味悪い中年と友達の黒部はいつのまにか消えていた。
そして現在に至る。

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